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ものづくり維新

サムスンを変えた吉川氏が語る ものづくり維新世界で勝つための10箇条サムスンを変えた吉川氏が語る ものづくり維新世界で勝つための10箇条
(2014/06/20)
吉川 良三

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サムスン電子を躍進させたプラン作成に関わった著者が苦戦する日本製造業
への提言です。非常にわかりやすくポイントを押さえて説明しています。

現在日本では製造業低迷の原因を6重苦だとしています。

1.長く続いた円高 

2.諸外国と比べ高い法人税 

3.厳しい労働規制

4.温暖化ガス排出規制

5.外国との経済連携の遅れ

6.電力不足

確かにそういう面もありますが、著者はそれが主たる原因
であるというには無理があるといいます。これらはいずれも
日本企業に決定的に不利な状況を招くものではないからだ
といいます。

日本のものづくり低迷の主たる原因はものづくりの世界で
起こった破壊的イノベーションへの対応を怠ってきたことに
あると著者は指摘しています。問題は外的に要因がある
のではなく、環境の変化にキチンと対応しなかったからだと
しています。

ここでいう変化は「グローバル化」と「デジタル化」です。

世界はこの二つをキチンと織り込んで動かないと、厳しい競争
に勝てないものに変わっていきました。この変化はそれまでの
常識や価値観が劇的かつ革命的に変わるパラダイム転換の
ようなものだった。

HBSのクリステンセン教授のイノベーションのジレンマで説明
することができる。どんな技術もそうですが、その進歩はやがて
市場が求めているレベルを超えていきます。
それでも進歩が止まらず、その技術を使って作られる製品は
やがて市場の誰も望まないような過剰機能を有したものに
なっていく危険がある。後発の国々の技術も進歩は先進国
に比べて遅いですが、レベルアップが図られて、やはり後発
の技術もやがて市場の要求するレベルを超えるものになる。
そうなると、製造コストが安く抑えられる分だけ、後発の国々
の方が競争力が高くなる。

ある段階までは高い技術力を有していることが大きな競争力
になりますが、技術の進歩が市場が望んでいるレベルを超えた
ところに来たときにはこの限りではない。市場の要求するレベル
のものが、誰もが簡単につくれるようになるからです。
これがグローバル化とデジタル化によって現実のものになった。

ではグローバル化、デジタル化とは何なのか。

グローバル化は国際化と混同されることがよくありますが、国際化
はコスト削減のために海外に輸出基地をつくるようなものを言います。
グローバル化は市場として期待される地域に工場や拠点を置いて
現地の文化やニーズにあった製品設計などを行う、地域密着型の
ものづくりのことを意味します。

工場や開発部門を海外にもっていくだけでなく、材料を現地で調達
したり、幹部やスタッフもまた現地で集めたりすることが求められ
ます。「現地」「現材」「現人」が基本になる。

日本のものづくりは国内や一部の先進国を市場として捉えて、
高品質の製品をつくることに注力してきた。日本国内と欧米相手
にしているだけで世界市場を席巻できた。
新興国の市場が拡大し、消費のボリュームゾーンと言われる
年収5000ドル以上の人たちは年間2億人強のペースで増えている。
日本がこれまでターゲットにしてきたのは年収3万5000ドル以上の
人たちです。豊かになってから相手にするのでは遅いです。

これまでターゲットにとしてきたTOP(35000ドル以上)2億人より
ワンランク下にあるMOP(5000ドル以上)8億人まで対象を拡大
させるということ。ターゲットとして狙うこのクラスにより早い段階
で日本製品をアピールしておかないと競争に打ち勝てない。

もう一つはデジタル化です。
ものづくりのデジタル化はCAD/CAMという設計・製造システムの
登場やインターネットの普及によってもたらされました。
コンピューターをある程度使えれば、モノづくりができるという
画期的なもので、日本のものづくりが大切にしてきたノウハウを
ほとんど無力にしてしまう劇的なものでした。

アナログなモノづくりには、経験豊富な設計者や技術者がいなければ
モノを造ることができなかった。そこに日本の優位性があった。
具体的なアイデアを設計者が図面化するところからはじまる。
どんな形状でどんな材質でやサイズの部品を用意し、それをどう組み
立てるかなどあらゆる情報を細かく示している全体の計画書のような
ものです。立体形状をしているものを全て紙の上の二次元の世界に
表現したもので、図学の知識が必要だった。

この設計情報に基づいて実際に生産現場でものづくりを行うと、細かな
問題が必ず出てきました。こういう問題に対処するうえでも、知識や経験
が必要だった。だから部品の発注から組立まで一切滞りなく行うためには
いろいろな問題に対処できる技術者の存在が不可欠だった。

3D-CADは設計情報を立体形状のまま現場に示すことが可能になり。
図学の知識がなくてもモノをつくることができるようになった。
パフォーマンスを向上させるための部品同士の組み合わせや、部品を
効率よく配置することで、狭い空間をうまく使うことも、コンピューターに
様々な情報を取り込んでシミュレーションを行うことで簡単にできるように
なりました。

こうした簡略化を後押ししたのが、モジュール化とマイコンの進化です。
結合部分が標準化されたモジュールの組み合わせのみで製品をつくる
ことができるようになった。だから日本得意の自前の部品開発を行わ
なくて済むようになった。またマイコンの高性能化で、同じく日本得意の
すり合わせさえ可能になった。マイコンによるすり合わせ制御である。

すり合わせは複数の部品をうまく組み合わせて一つの機能を実現する
ものづくりの手法で、インテグラル型とも呼ばれている。乗り心地の良さ
運転のしやすさ、静かさなど~さを実現する原動力だった。
長年の活動のなかで培ってきたものづくりのノウハウが、あるときから
ノウハウになりえなくなったということだ。

ハイエンドを対象としてきた日本にとって品質的には粗悪品に見えますが
ローエンド市場や新興国で求められる品質や機能への要求なら十分に
対応できる。だから後発企業はアナログものづくりとは比較にならない
スピードで次々と新たな製品を生み出している。

ハイエンド製品も最新の設計情報をインプットしたコンピューターと、最新の
加工情報をインプットした工作機械があれば、それこそ優れた設計者や技術者
がいなかろうと、世界中日本でやっているのと同じレベルのものをつくることが
できる。

日本では「イノベーション」「マーケティング」「コンプライアンス」という言葉に対する
理解が誤解釈されている。

イノベーションは革新、新機軸というふうに訳されていますが、イノベーションを
起こすのに新技術が必要だという考え方をしていると、必然的に行動は制約される。
現実には既存の技術でも使い方を変えたり、組み合わせを変えることで、イノベーション
を起こすことができる。アイフォンやダイソンの掃除機などがそれである。

マーケティングは市場調査と訳されている。
日本企業で行われているマーケティングは実績ある市場における調査がほどんどです。
まだ第一線から離れたベテラン社員を担当にして、広告代理店など外部に委託する。

マーケティングとは市場創造、市場発掘であり、生産者から消費者に至る財ならびに
サービスの流れを推進するビジネスの諸活動であると定義されるものです。
これは当然ながら、製品の開発から販売に至る戦略作りが含まれています。

市場における消費者の好みや動向を調べて、選ばれる製品を企画して提供するため
の戦略全般がマーケティングです。

コンプライアンスは法令尊守と訳されます。
もっとも適している訳は迎合性です。社会の変化に適応する柔軟性のことです。
見たくないものを見る、聞きたくないことも聞く、考えたくないことも考える、あっては
困ることをキチンと捉える、発生頻度が低いことでも想定内として考えておくなどである。

日本の強みと弱み

ものつくりという言葉を「もの」と「つくり」に分けます。

「もの」は付加価値を生み出す能力であり、ワクワク・ドキドキさせる製品を企画する能力です。
「つくり」は「もの」を具体的な形にする能力です。わかりやすく言えば生産技術です。

日本のものづくりは人々の欲求をくんでそれを満たす新たなものを創り出すよりも
どこかで誰かが考えて形にしたものを上手につくることに長けています。

全く新しい考え方やアイデアを生み出す「もの」のパートより、既にある考え方やアイデアを
より上手につくる「つくり」のパートが得意ということです。
それは消費者のニーズより、技術革新が優先されていた。

日本のものづくりにおいて一番の弱点は、製品開発が消費の本質を考えずに行われてきた
点ではないだろうか。技術の高さや機能の豊富さが日本製品の特徴ですが、実はそれが
消費者を満足させているとは限らない。むしろそれを実感できない使い方がなされている。

その製品が消費者に求められているかどうかは、消費の実態で判断すべきである。

グローバル化とデジタル化ものづくり時代に世界の市場を席巻しているのは「つくり」より
「もの」のパートに長けている企業です。

技術には基礎技術と応用技術がある。
基礎技術はある機能を実現するときに根幹になるものです。
こちらは科学技術という言葉に置き換えることができる。
一方、応用技術は基礎技術を使ってある機能を実現する。
具体的な製品をつくるための技術です。

日本企業は基礎技術をたくさんもっているものの、あまり
生かされていない。逆に後発の海外メーカーがそれら技術を
利用して製品開発をしている。日本企業は応用技術に弱い
ということです。

日本は「つくり」に強いこだわりがあるので開発から生産まで一貫して
行う垂直統合型がメインです。生産や品質を管理しやすいという
メリットがある。「つくり」を外部に任せるのが水平分業です。
品質を維持しにくいデメリットはあるものの、製造コストを大幅に削減
できるし、製品を低価格で提供できる。

日本の強みは技術力です。
躍進している中国や韓国の企業は日本や欧米で開発された基礎技術
をうまく組み合わせて使っているに過ぎない。
実はそれはその国の文化と大きく関わっている。
韓国は過去に何度も隣国に攻められた経験がある。
だから、不安定な状態で国家運営がなされる状態が長く続きました。
そのせいで、国内ではすぐに結果が出る活動が好まれるし、逆に
結果がでるまで時間がかかる研究開発のような地道な活動は
避けられる傾向がある。中国も同じ傾向がある。

日本企業がR&Dに力を注ぐことができたのは、日本の国政が安定して
いて、継続かつ長期的な活動がしやすいからです。技術が著しく進んで
いる今は、既存の技術の組み合わせで全く新しい製品をつくりだすこと
ができる時代だ。従来なかった全く新しい技術によるイノベーションを
起こせるとなると、ものづくりの幅は広がる。

日本は基礎技術だけでなく、生産技術も磨いてきた。
同じような製品を上手につくる能力に長ける企業がたくさんある。
問題なのは、必要以上の品質へのこだわりです。
過剰品質は結局のところ生産性の低さにつながります。
消費者の望んでいない品質のためにコストや時間をかけている
のは無駄以外の何者でもない。

日本企業の機会と脅威

脅威はデジタル化です。
日本企業の強みである金型が、切削加工や3Dプリンターの積層
に変わっていくのではないか。3Dプリンターを利用すれば1万ショット
ぐらいの試作金型程度のものはつくれるようになる。

日本企業はリーダーを育てて、組織改革を行うことがポイントになる。
組織は長く活動していると「形式主義」「数量主義」「管理主義」など
官僚化していく。全てにおいてスローになる。

ライバル企業の動きを見て、じっくり自分たちの動き方を考えるなんて
悠長なことをやっていたら、取り残されてしまう。
トップは決断に必要な情報を収集して、組織の未来を左右する重要な
情報が瞬時に入るような体制を築くことが求められる。
外の世界とすっかりつながりを持って、外部から自分たちの会社を
冷静に見ている、信頼できる人や組織の意見をいつでも聞ける状態
をつくることです。また最終的に決断を行うトップをサポートして、正確
な情報を素早く上げてくれる体制を社内構築できたら、重要な決断を
素早く行うことができるようになる。

マザー工場は日本に残すべき。そうすることである国から撤退しても
次に展開できる。

要するに日本のものづくりが低迷しているのは世界市場で戦える力を
失ったからです。

世界で勝ち抜くための十ヶ条

1.顧客にワクワク感を与えて、高くても売れるものを実現する

競争力とは安いことではない。コスト競争力ではなく選ばれる力である。

サムスン電子は先進国のニーズを把握したら、リバースエンジニアリングを
行う。リバースエンジニアリングを用いれば、既存の技術を組み合わせること
によって製品を開発できる。それでワクワク感をだせればいい。

リバースエンジニアリングは機能単位に分解して再構成する。
新たな技術を開発せず、多様な製品を生み出す。
部品も独自開発するのではなく、汎用部品ばかり組み合わせることで
短期間に設計する。

生産技術、生産管理、現場改善といった能力とは別に、ワクワクするものを考え
出す能力が重要だとわかる。

2.意志決定を速めよ

上意下達ではなく下意上達。カギはトップよりスタッフが握る。
考えるのはスタッフ、判断は会長。権限委譲と中央集権。

3.品質は松竹梅に造りわけよ

ニーズに応じた多様な設計と製造の造り分けによってユーザーを確保せよ

4.市場となる地域を根本から理解せよ

進出国の文化まで知らなければニーズはわからない。

5.特殊部品へのこだわりを捨て、汎用部品で製品を作れ

目的は早く安く売ること、特殊部品には販売機会を失うリスクも

6.リバース・エンジニアリングはクリエイティブである

日本製品の設計思想を解析し、別の製品として市場を奪う

リバースエンジニアリングは既に市場にある製品を基に、より改良した
製品や安価な製品を開発し、それを大量に販売するための方法だ。
高い市場占有率を得られると、利益が大きく拡大するのがこの製品の
特徴である。

次の段階がフォワードエンジニアリングと言う。
イノベーションによって高度な製品を独自に開発して販売する方法だ。

製品の基本構造を決めるまでが設計の仕事である。
どのような機能をどのような構造で実現するか決める活動が
リバースエンジニアリングである。

7.検査は不良コストと心得よ

検査基準は顧客が決める。メーカー自己都合の活動はいらない。

8.QCDの考えは作り手の都合にすぎないと自覚せよ

顧客視点に立つからこそ、QCD(品質・コスト・納期)は使わない。

9.海外に技術を積極的に出して仲間を増やせ

つくりのレシピを公開。逆転の発想で反転攻勢へ。

10.個の強い人材を育てよ

どこでも寝られる。何でも食べられる。誰とでも話せる。





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現場主義の競争戦略

現場主義の競争戦略: 次代への日本産業論 (新潮新書)現場主義の競争戦略: 次代への日本産業論 (新潮新書)
(2013/12/14)
藤本 隆宏

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日本の産業の強み弱みを冷静に分析して進むべき方向性を提示している
良書だと思います。希望を持たせてくれる本だと思います。

そもそもひとつの産業は同種の現場の集まりである。したがって現場発の
下から見上げる産業論は成立しうる。産業には表と裏の顔がある。
表側は市場に向き、裏側は現場が支えている。表の産業力は市場や顧客
から見える指標、例えば出荷額、売上高、成長率、価格などで把握する。
裏の産業力は現場の指標、例えば生産性、原単位、生産リードタイム
不良率などで測る。

日本の産業力は表層の現象、結果として出荷額の増減などで評価される
傾向があった。著者は日本の強い現場は概ね健全な対応をしているので
すが、一部日本企業、特に大企業の本社や経営陣の一部にもう日本で
ものをつくるのをやめようかという空気がある。

企業が海外生産を行う基準は大きく二つあって、第一は市場立地です。
輸送費、関税、現地政府の国産化政策、消費者イメージ、現地での販売
生産、開発の連携などの理由から、その製品のまとまった市場が存在
するのなら、現地工場を建て、そこから市場へ供給する。

第二は比較優位立地で、その製品を作るのが最も得意な国に工場を
建てるという適材適所の考え方です。問題は合理的で長期的な判断
ではなく、よそも出たらうちも出る、新聞に書いてあるので出遅れるな
など短期的な判断で国内工場閉鎖を決めてしまうことです。

日本には多能工チームワークを得意とするサッカー型の現場が多いので
その力が活きる製品なら日本の輸出企業として生き残りやすい。
第一は生産現場でチームワークが活きる製品。多工程持ちで圧倒的な
生産優位を築く。第二は設計現場でチームワークが活きる製品。
細かい設計調整をやらないと良い性能が出ない擦り合せ型設計製品が
そうです。

我々は現場現物の視点から競争力を考えますが、その基本は現場のもの
づくり組織能力と、現場の製品の設計思想、つまりアーキテクチャの相性が
良いかどうかです。

そう考えると、チームワークが持ち味の日本の生産現場や設計現場が得意
なのは、現場で調整をたくさんやらないと市場や社会が納得する性能が出
ないタイプの調整集約型の製品です。つまり機能と構造の連立方程式が
複雑なややこしい製品で私が擦り込み型とか作り込み型と呼ぶものです。

日本の産業にとって複雑な製品はリスクも勝機も両方ある。
複雑な製品の特徴は製品に対する顧客の機能要求や社会が課す制約条件
が厳しい。例えば自動車がそうである。

キリがない形で顧客の機能要求がどんどん厳しくなる。
社会的な規制が厳しくなる製品でこそ、日本の産業現場に生き残りのチャンス
があるのです。なぜならそういう製品は設計が複雑な擦り合せ型になりやすく
多能的な技術者によるチーム設計という組織能力が活きる世界なのです。

近年日本産業はデスクトップ型のパソコンなど多くのデジタル製品で競争力を
失った。それがデジタル化が進んでアーキテクチャがシンプルなモジュラー
(組合せ)型になってしまったからです。

いずれにせよ、厳しいグローバル競争の時代の日本人に必要なのは比較優位
を見極めた戦略的な産業観です。一国として何がやりたいかだけでなく、何なら
勝てるかという戦略的なものの見方です。

日本に残るべき良い現場を残す。これが現場発の成長戦略です。
どんな現場が残すべき良い現場なのか。例えば文句なしに低コストの現場。
コストは高いが生産性も高い現場、生産性は低くても短いリードタイムで
スピード勝負ができる現場。あるいは他国ではつくれない高品質・高技術の
ものが作れる現場、常に進化している現場、いまはコストで負けているが
抜き返す力を余している現場などである。

市場というのは案外長い時間をかけて、現場の淘汰を進めていくのです。
つまり執行猶予期間があるので、そのあいだに奮起して生産性を高めれば
生き残れるチャンスはある。能力構築競争とは現場間の長期競争のこと
です。

日本に良い現場を残すためには、まず国内現場の存否の最終判断を
すべき経営者や本社が、会社全体として能力構築を続ける意思を示し
また残すべき現場をしっかり残す現場評価能力を持つ必要があります。

複雑な擦り合せ型の製品とシンプルなモジュラー型の製品、つまり設計
思想の違う2つのタイプをグローバルに使い分ける。けれども組織能力
としてそれができる企業は日本に多い。

我々の考えるものづくりの概念は製造業にも非製造業にも通用する
広い意味のものだ。それはモノより設計をキーワードにした広い概念で
要するに良い設計の良い流れを作ってお客さんが喜んだ、こっちも
儲かった、雇用も守られたという状態を目指す経済活動全てのことを
いいます。

良い設計の良い流れを作るための全ての活動が広義のものづくり
なのです。付加価値は設計に宿るので、お客様へ向かうその流れ
を作るのに貢献する人は、生産でも設計でも購買でも販売でも、
全てものづくりに関与していることになります。

良い設計情報の発信によって顧客経験の良い流れを作ろうとする。
物財は構造設計情報が有形の媒体に転写されたもの、サービスは
機能設計情報が無形媒体に転写されたもの。

製品とは設計情報が媒体=素材に転写されたものである。
媒体が有形であれ、無形であれ強い現場は強い現場であり
良い設計の良い流れでもってお客さんを喜ばせている。
トヨタ生産方式だけでなく、花街の芸妓さんや舞妓さんもそう。

現場発の産業政策は何かといいますと、良い現場を国内に
残すこと。現場が良い設計の良い流れを作らない限り期待する
付加価値は生まれない。

全国の製造業と非製造業の現場がものづくり知識を共有しつつ
日本全体の生活水準をさらに向上させていくこと。これが現場発
の産業論の基本だと考えます。

大企業も中小企業も、製造業も非製造業も、総力を挙げて良い設計
による有効需要の創出に取り組む。よい商品企画で国内外の顧客
を創造するのです。

企業はそうした良い設計や良い流れ、言い換えれば良い商品、良い
現場を的確に評価する能力を確保する。国は財政金融政策などを
通じて有効需要を創出し、民間が埋めきれない需給ギャップを埋める。
これらが揃わないと、次世代の生活水準を我々世代よりよくしていく
ことは難しい。

製造業と非製造業の現場が一体となり、互いに補完し、学習しながら
生産性向上と需要創造を両輪として回していく。それが現場発の成長
戦略です。

生活者・企業・現場の三者が考える国家政策を。
企業か、生活者かではなく、次世代の生活水準を良くしようという目標
を実現するためには、それに加えて良い現場の能力構築という第三の
軸が加わればいい。

資本の論理で動く企業と地域的な存在である現場は異なる社会的な
存在である考えたほうがわかりやすい。現場は自らの存続と雇用を
かけて良い設計と良い流れの能力構築をする。
大企業はこれを活用して利益と成長を追求する。
中小企業は企業と現場という二つの顔を持つので、利益よりも存続
と雇用を重視する傾向がある。

付加価値作業時間比率というトヨタ方式で大事にする数字。
これが3倍になれば、他の条件が一定の時現場の物的生産性も
3倍になる。

トヨタ流の稼働分析では賃金を払っている労働時間を3つに分類します。
第一はお客様が喜ぶ付加価値を生んでいる時間。ものづくり経営学では
設計情報転写時間。お客様に向かって付加価値のある設計情報が流れ
ている時間。第二は付随時間。必要だが価値を生んでいない時間。
例えば部品や工具を取りに行く歩く時間などである。第三はムダで
必要でもないし付加価値を生まない時間。付随時間が多くの職場で
膨大にあることに注目してしっかり改善することです。

新興国の拠点で生産性や品質の向上のやり方を教える先生となる
マザー工場が本国である日本になければ今後はグローバル経営
そのものが厳しくなる。

産業競争力の観点から、いまの電力論に欠けているのは電力の
質の確保という点です。電力の品質確保は日本の高付加価値系
の産業の一部にとっては非常に重要な立地条件の一つである。
日本の電力品質の高水準を保てなければ、日本の高度な産業
構造を支える分野、繊細な温度管理を必要とする特殊鋼メーカー
高機能鋳物の工場も競争力を失うか、同レベルの品質で安い
電力を求めて海外へ出ていってしまう可能性がある。

日本の産業や現場がこの先どうなっていくのか。

①一時は絶望的に大きかった主要な新興国との賃金格差がついに
 縮小し始めた。

②90年代以後の逆境機にも能力構築を続けてきた日本の優良な
  貿易財現場は、その多くが新興国の工場に対して生産優位を
  保っている。

③そうした優良現場の多くが大幅な生産性向上の余地をまだ残して
  おり、新興国工場のキャッチアップに対して生産性の優位を維持
  できる可能性がある。

ただし、それには3つの条件がある。

①今後も能力構築と生産性向上を続ける意思と能力がある良い現場
  に限られること。

②比較優位の原則がある以上、全ての産業と現場で競争状況が好転
  するわけではない。

③現場の復調と企業の復調が必ずしも一致しない。

一般に経済は産業の集まりであり、企業の集まりである。
同種の設計のものをつくる現場の集まりが産業であり、同一資本が支配
する様々な現場の集まりが企業、この二つが重なるところに事業が生み
出される。産業も企業も結局は現場の集まりです。ものづくりの現場とは
付加価値が生まれる場所であり、それが集まれば一国経済や世界経済
になる。物的生産性向上をもたらすのは良い現場です。

ものづくりの組織能力とは、要は良い設計の良い流れを制御する組織
ルーチンのシステムです。ルーチンとは型通りの仕事の仕方のことで
トヨタ生産方式に関わる組織能力は、約400のルーチンが連動する
システムと言われている。

ものづくりの組織能力を制御するのは生産だけでなく、顧客と企業の間
を循環する設計情報の流れの全体です。顧客の本質的な価値を先取り
する製品のコンセプトの創造からはじまり、それを技術翻訳する機能設計
形や材質に翻訳する構造設計、さらに工程設計、生産準備、購買、生産
販売、サービス最後に顧客の消費これらの設計循環の全体を良い流れ
にするための様々なルーチンの集まりがものづくりの組織能力です。

アーキテクチャは機能設計と構造設計の対応関係で設計思想と呼ぶ
ことがあります。アーキテクチャには大別して機能要素群と構造要素群
が多対多で複雑に絡んだ擦り合せ型(インテグラル型)とそれらが1対1
でシンプルに結びついた組み合わせ型(モジュラー型)があり、実際の
工程は大抵どこかに位置づけられます。

ダントツ技術

ダントツ技術 (祥伝社新書)ダントツ技術 (祥伝社新書)
(2013/09/30)
瀧井宏臣

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アメリカの経済誌2012年度版フォーチュン・グローバル500売上高ランキングに
ランクインした日本企業は68社あった。これはアメリカの132社・中国の73社に
次いで3位です。また東証一部上場中149社が、世界シェア8割以上を有する
独走状態の商品を持つといいます。

それらに共通するのは独創的な技術です。
思いもよらぬ発想から生まれ、試行錯誤を経て完成した製品はどこも真似でき
ないものだった。この本では4つの代表的な企業をとりあげて、それを生み出し
た背景には何があるのか分析しています。

ハーバード大学東アジア研究所のエズラ・ヴォーゲルが1979年にジャパン
アズナンバーワンを出版した。ヴォーゲルは58年~60年、75年~76年に
日本に移住して日本の社会構造を研究した研究者です。
日本は戦後急成長しGNPではアメリカに次いで2位になった。アメリカは
大きな対日貿易赤字を抱え、その原因は日本の保護主義であると喧伝
されていましたが、ヴォーゲルは強い国際競争力ゆえであるとしています。

日本の平均的労働者がアメリカの勤勉な労働者レベルの意欲と生産性を
有し、日本独特の終身雇用制度、年功序列性、長期計画、会社への忠誠心
とりわけ注目したのが、日本企業が目先の利益よりも長期的な利益を重視
した点です。将来に備えて社員を研修させることはもちろん、将来採算がと
れそうな研究開発に投資し、設備の近代化にも投資する。それが日本の
強みであり、そうした長期を見据えた経営が可能だったのはメインバンク
から資金をふんだんに調達できる環境にあったとヴォーゲルは指摘しています。

日本経済はかつてなぜ強かったのか。答えは一つではありませんが研究
開発への投資が大きかったといいます。最近ではリストラをして短期で黒字に
転換することがもてはやされ、日本企業の多くが欧米流の強欲資本主義に
飲み込まれつつあるように見える。2000年頃までは日本企業の多くは地道な
研究開発を続けて、すぐさま売上や利益に結びつかなくても、中長期で増益
を目指す経営哲学を持っていた。

コツコツ基礎技術を磨いて、10年か15年後に花を開かせ、実を結んできた
のが日本企業の強みだった。それを国や政府がバックアップする。
欧米の磨けばダイヤになるのか2~3年で見極め、ダメだと判断したら
バッサリと切り捨てるのは違うのではないか。企業は未来永劫栄える
ことを目指しているわけで、株主も高い配当を安定してもらえるのが一番
望ましいという専門家の意見が紹介されています。

浜松ホトニクスの場合

浜松ホトニクスでは短期利益アップにこだわる経営とは一線を画した、東洋
的な和の経営を目指している。「株主も大切ですが、社員も同じくらい大切
です。売り上げが落ちた時に社員を解雇するのが欧米のスタイルは私たち
の望むものではありません。やっぱり安定した持続可能な成長を目指したい。
そしてこういう経営スタイルもあるのだということも世界に発信していきたい」

シェア一位を獲得して維持している理由については、顧客の注文や要求に
耳を傾け、満足してもらえるように性能をアップし、シェアを伸ばしてきたこと
です。常に研究開発を続けていないと顧客の要求に対応できない。
もう一つは企業トップのブレない姿勢。世の中にないものを作れ。世界一を
目指せというトップの方針の下、顧客要望に応えるモノづくりを積み重ねて
きたという点だ。

未知未踏のものを追いかけていけば、新しい知識によるサイエンスが生ま
れる。その周辺に新しい技術が生まれ、技術の応用が考え出される。
そうなれば産業が創出される。それが人類に新しい生き方を与え、今まで
にない新しい価値観が生まれる。

我が国の経営者は産業を作って儲けることで、それを分配してしまい。
新しい生き方や新しい価値観を求めることをしてきませんでした。
結果としてモノは増えてお金持ちになったが生活が豊かになったわけ
ではない。産業は人類にとって新しい生き様、新しい価値観をもたらす
ものでなければならない。

日本経済再生の3つのポイント

1.世界標準の仕組みづくり。日本企業はいいものをつくる技術を持って
  いても、世界のマーケットを対象にした仕組みづくりがうまくいきません
  でした。日本国内向けの仕様を作って世界で受け入れられない
  ガラパゴス化がいい例である。

2.開発資金の選択と集中。日本がこれからどのような技術をメインにする
  のか、よく考えたうえで、政府が必要な予算を投じ、政府が大きなプロ
  ジェクトを進めていく。

3.ベンチャー精神の復活。何でもやってみよう、とにかくやってみようと
  未知未踏に挑戦するベンチャー精神が再び必要な時期にきている。
  中小企業に入って自分が大きくするんだというくらいの気概が必要。

クラレの場合

企業理念「世のため人のため、他人のやれないことをやる」

人まねではなく、独自の技術によって作ったものを社会の要請に応えるべく
世に出していくのが、クラレ創業当時から考え方である。

つながりのある業界に常にアンテナを立て、顧客から要望があると、営業や
技術スタッフが素材だけでなく、設備や製造、加工条件まで提案して問題を
解決する。そういう積み重ねがマーケットの拡大につながった。

1986年に制定された企業理念。
①個人の尊重 ②同心協力 ③価値の創造

行動指針
①顧客のニーズを基本とすること ②現場での発想を基本とすること
③積極的に行動を起こすこと

ハードロック工業の場合

基本理念
1.心豊かな創造性を磨き、無から有を生み出し進展させる
2.アイデアの開発を通じ、人と企業と産業社会の発展に貢献する。
3.この社会は我が社のための道場であり、見るもの触れるもの、全て
  我が師である

良いアイデアを考案するためには利他の精神が重要になる。
顧客や多くの人たちにどうしたら喜んでもらえるか考えを巡らせること
がアイデアの源である。

オンリーワン商品を生み出す秘訣
①すべてのものに好奇心を持ち、見て、触れて、感じる
②世の中の商品は全て未完成(60%~70%)である。どうすれば
  もっと便利になるか考える。
③世の中のものは全て組合せで成り立つ。

営業で成功するポイント
1.最初はトップ自らがあたる
2.最終ユーザーの評価・ニーズを把握する
3.知名度を上げる努力を怠らない
4.何でもいいから他社にはない特徴をつくる
5.情熱をもって粘り強くあたる

営業は最終ユーザーに商品情報を届けるだけでなく、顧客ニーズ
を吸い上げる機会でもあります。顧客のニーズが把握できなければ
新商品開発もできません。

ロングセラー商品のポイント
①ひとつのテーマを徹底的に掘り下げる
②特許期限を一日でも長く伸ばす工夫をする
③開発者が情熱注ぎ込む

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