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戸籍アパルトヘイト国家中国の崩壊 川島博之

中国の社会構造の本質を鋭く指摘した本だと思います。
以前から言われていることですが、中国には身分制度がある。
都市戸籍と農村戸籍である。中国には13億人の人が住み
そのうちの4億人の都市戸籍者と9億人の農村戸籍者がいる。
そして9億人の農村戸籍者のうち3億人が農民工と呼ばれる
農村から都市への出稼ぎ労働者となっている。
日頃、テレビなどのマスコミに出てくる中国人は都市戸籍者
である。

都市戸籍者と農村戸籍者には大きな格差がある。
著者は農業研究者であり、中国の農村へは調査でたびたび
訪れている。中国は常に農業国であり、中国の歴史とは
農民をいかに統治するかということでもある。
現在の構造は4億人の都市戸籍者が9億人の農村戸籍者
を搾取するという戸籍アパルトヘイトであり、その身分制度
をもって経済成長を達成したと言える。例えば9億人のうち
3億人が農民工という身分ですが、彼らは都市戸籍者の
生活を支える低賃金労働者になっている。

農村戸籍を有している成人は国から農地の配分を受ける
ことができる。中国の農地面積は1億ヘクタールなので平均
すれば0.16ヘクタールしかない。日本ですら2.74ヘクタ
ールはある。農民は農地を使用する権利をもらうだけで
所有権はない。また農業は定年制がないので年金制度が
ない。また農民工として都市へ移り住んでも都市の小学校
や中学校に通わせることもできない。

中国にも団塊の世代がいる。
それは毛沢東が行った大躍進政策。この失敗で3000万人
が餓死したという。1959年~1961年出生数は激減した。
その失政を隠すために1962年インドと国境紛争を起こした。
そしてその1962年に出生数は大幅に回復している。
ちなみに1937年~1945年の日中戦争時代は大躍進政策
時代のような出生数のような落ち込みはみせていない。

中国のこれからはサービス産業だといいますが、サービス
産業は高い教育を受けた人がたくさんいて初めて発展する。
大都市はともかく、中小都市、農村でそれを望むは厳しい。

ほとんどの都市住民は農民や農民工の境遇には興味がない。
それには中国の歴史的背景がある。中国文明は黄河と
長江に囲まれた地域で誕生した。黄河が小麦作なのに対して
長江は米作地帯です。米を作るには灌漑設備が必要になる。
小麦では灌漑設備は必要ない。水田で米を作るには多くの人
の協力が必要になる。小麦は食べるのに粉にしてパンにする
など手間がかかる。おまけに必須のアミノ酸が足りないので
肉などを食べる必要がある。それに対して米は炊くだけで
よいし、美味しい。同じ面積からたくさん収穫することができる。
小麦は休耕が必要になる。水田で米を作っている人は温和
になる。協調性に富み、平和を好む傾向がある。
小麦の地帯は遊牧民になり、肉を食べるので体が大きく、馬に
乗っていたので戦争は強かった。黄河流域と長江流域では
気質が全く違った。遊牧民は統一国家を作りにくい。
放牧地域を巡って争うからで、もともと遊牧民の国だった
イラクやシリアがまとまらない背景はそこにある。
米作地帯は工業化に適している。アジアで工業化に成功して
いる地域は米作地帯である。中国の歴史を見ても、北部の

黄河麦作地帯が南部米作地帯を支配する歴史でもある。
そして北部では城壁を持って都市を守った。
囲いの中の人は守られますが、外の人は守られない。
国民とは城壁の中の人であり、外の人は二流国民。
これが農民を二流国民と考える意識を生む原因となって
いる。北部の政権にとって南部は同じ国民ではない。
しゃべる言葉も違い、気質も違う。植民地の住民の意見
など聞く必要はない。命令するだけです。
中国政府の強引な物言いは北部による南部の統治
からきている。

中国は広大である。その広大な領土を統治するのに
反乱が怖い。だから中央から派遣される官僚によって
統治させる。統治者は地縁がないので任期に最大限
収奪する。汚職も跋扈する。封建制はその土地に根差す。
そうする場合は苛烈な統治はできない。穏当に過ごす
ことが大切になる。だから農民にも気を配る。

現在の国際体制はウエストファリア体制だが、これは
中規模の国が集まった欧州のルールであり、中国は
周辺と比べて巨大だったために自分だけが特別という
意識がある。だから中国は尊大な態度なのである。

中国では1000年前の宋の時代文人が社会の中核を
占めているので、軍人は社会の中核を占めることが
できない。社会的地位が低いので国家や国民のため
に尽くそうという意識は低い。良い人間は軍人には
ならないのである。彼らの多くが農村出身者である。
中国政府が武装警察や人民解放軍に与えてくれる
最大の恩恵は天下り先です。それがあるゆえに
統制が保たれている。

現在の中国は農民を踏み台にして都市住民が豊か
さを得ている。公平な選挙を行えば、農民工の賃金
を大きく上昇させることで輸出産業が競争力を失う
食堂の従業員の給料が上がるので料理の値段が
上がる。中国政府は都市住民には配慮するが、
農村は武装警察で抑え込める。

中国には国家戦略はないという指摘は鋭い。
外交上手と日本の評論家が発言しているが、全く
そんなことはなくて、中国の戦略書は中国人同士
の争いに関する本である。外交戦略がないから
周辺国から介入され、乗っ取られてしまう。
中国はじっくり格差を是正して国力を充実させるべき
だったのだが、習近平政権は対外膨張へ舵を切った。
莫大な軍事費を費やしている。さらに農民犠牲の
成長モデルも限界にきている。リーダーである
習近平氏は能力的には鄧小平には劣る。
戸籍アパルトヘイト国家中国の崩壊は十分ありうる
シナリオである。
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中国に勝つ日本の大戦略 北野幸伯

日中戦争はもう始まっている。
2012年11月15日ロシアの声に反日統一共同戦線を呼び
かける中国という記事が掲載された。中国がロシアと
韓国に反日統一共同戦線をつくることを提案した。
中国、ロシア、韓国は共同で日本の領土要求を断念
させる。(日本には沖縄の領有権もない)日本の同盟国
アメリカも反日共同統一戦線に参加させる。

戦争とは戦車や戦闘機だけではなく、その前に情報戦
と経済戦がある。情報戦は敵国が悪の国であると、自国
民と敵以外の第三国に信じさせる目的で行われる。
経済戦は経済制裁です。現在はロシアのクリミア併合。
かつては日本はABCD包囲網で石油を遮断された。

戦争はある国の指導者の心の中、頭の中ではじまります。
指導者は戦略=戦争に勝つ方法を考えます。
情報戦を仕掛けて敵国を悪魔化し、外交戦で味方を増やし。
敵国を孤立させて、必要があれば経済戦で敵国を弱体化
させる。できることなら戦わずして勝つ。
日本に置き換えると尖閣、沖縄を守りつつ、日中戦争を
回避することについての戦略をこの本は語っている。

反日統一共同戦線の背景には沈むアメリカ、昇る中国。
アメリカ一極支配の終焉がある。09年の世界経済危機
で中国だけが独り勝ちしたことで、それまでの平和的台頭
というスローガンがウソだったことがわかった。
それに気がついた米国は戦略を中心を中東からアジアへ
シフトさせた。シェール革命で中東の重要性が低下した。
13年訪米した習近平は新型大国関係、つまり東アジアは
俺に任せてくれと要求。日本は中国の管理下に入ること
なる。軍国主義者安倍総理というプロパガンダは成功する
かに見えた。しかし、ロシアのクリミア併合が安倍総理を
助けた。中国はロシアに接近。ロシアを取り込めば石油
ガスなど中東シーレーンに頼っていたが、直接パイプ
ラインで引くことできる。アメリカの支配する海を避け
自己完結型の圧倒的な支配勢力になれるからである。

中国は一帯一路の経済圏構想、通貨覇権を握るAIIBを
設立。イギリスが参加することで世界各国が雪崩を起こ
した。そこで唯一裏切らなかった日本を米国は信用する
ようになる。そこで安倍総理は米国議会演説させること
にもなった。中国に対抗するうえで韓国を引き寄せる
ことが重要になる。そこで慰安婦合意が行われる。
またロシアを中国から切り離すため、ウクライナ
シリア、イラン問題に道筋をつけた。
そこから中国バッシングを開始した。
安倍総理はアメリカ、ロシア、韓国と関係を改善させ
中国の反日統一共同戦線戦略を無力化することに
成功させた。

共産国家中国と米国が冷戦中に和解した理由はソ連
という共通の敵がいたからである。米中関係は72年当時
で既に事実上の同盟関係であった。以降、科学技術、
貿易、そして軍事にまで協力分野を広げた。
レーガン政権では遺伝子工学、自動化、宇宙工学など
まで広がる。米中のつながりは深い。

93年クリントン政権は反中を掲げていた。
しかし中国はアメリカ政府内に親中グループを組織し
反中政策転換させることにした。親中グループには
ロバート・ルービン、ローレンス・サマーズなどがいた。
93年末には反中政策を改めることを認めさせた。
これをクリントンクーデターという。
中国は米中同盟を維持し、中ロ同盟をつくる巧妙な
外交をする。そしてトランプ政権もチャイナロビーが
娘イバンカの夫クシュナーを抱き込むことで反中
姿勢を転換させることに成功している。

日本は第二次大戦の評価を善悪論ではなく勝敗論
なぜ負けたのか率直に考えるべきだ。
日本は中国に戦争では連戦連勝だったが、中国は
米国、英国、ソ連を味方につけた。
中国は米国、ロシア、韓国が一体になって日本を
つぶすこと。これに対して日本は米国との同盟関係
を強固にすること。ロシアとの友好関係を深化させて
いくこと。韓国と和解することである。

日本、米国vs中国、ロシアは中立。この状態を維持
できれば中国が負ける戦争を仕掛けてくる心配は
ない。そのためには日米同盟を強固にする。それに
は尖閣を単独で守る覚悟が必要である。
日本は米国を中心とする対中国バランシング同盟を
目指すべきである。米国、インドを味方につけ、台湾
フィリピン、豪州など中国を脅威に感じている国を
味方につける。EUも味方につける。EUの情報は
世界に受け入れやすい。

著者は中国の国家ライフサイクルでいうと、2020年
にバブル崩壊もしくはそれに匹敵することが起こる。
その結果、政治的に不安定になる。これは日本の
バブル崩壊でも見られた現象である。その際には
対外的に暴発する危険性がある。そのために対中
戦略が重要になる。

非常にわかりやすく日本の進むべき外国戦略に
ついて語っていると思う著書です。

なぜ中韓はいつまでも日本のようになれないのか 石平

近代文明についての日本と中韓の比較を社会学視点で論じている
本です。鋭い考察だと思います。

一つの国あるいは地域において産業化=近代化が起きてくるための要因。

➀自然に対する好奇心から発するところの、自然への実証的考察と論理的
思考などからなる科学の精神の芽生えと発達。それは産業革命に必要な
近代技術を生み出す精神的土壌になる。

➁独立した自由知識人層の分厚い存在。こうした科学の精神の担い手となり
近代技術と発明を生み出すための生みの親になった。

③近代技術と発明を生産活動に応用して、近代産業を作り出すための資本と
ノウハウを蓄積したブルジョワジーの存在。彼らの存在と活躍なくしては、経済
領域における現実の動きとして産業化は起こり得なかった。

④➀と➁と③という3つの条件を生み出す深層にある歴史的要因としての
西洋世界独特の二元化権力構造とそこから生み出される自治都市の存在。
中世において出来上がった政治と社会システムこそが近代化の土壌となった。

絶対主権者としての皇帝、皇帝の手足となって土地と人民を支配する官僚
官僚を選抜する科挙制度は中国独特のシステムである。この政治制度を
正当化するイデオロギーが儒学を発展させた朱子学である。この三点セット
の中央集権体制を丸ごと導入したのが朝鮮半島である。

世俗権力と教皇権が分離された西欧の二元化権力構造に対し、中国・朝鮮
半島の権力構造とは政教一体。宗教と政治が一体となった皇帝・国王中心
の一元化権力構造である。中国独特の一元化権力構造では権力は全て
官僚たちが独占し、民間の商人、資本家たちはお金があってもいっさい権力
もなければ、いかなる権力からも保護も受けていない。これによって構造的な
収奪が繰り返された結果何が起きたのか、富が中央を頂点とする官僚と官僚
機構に吸い上げられていくばかりで民間にほとんど蓄積されなかった。
これは近代産業の生みの親であるブルジョワジー層が育つのが不可能だった。
近代化条件の近代産業を創りだすために資本とノウハウを蓄積した層が不在
であり、近代化、産業化の前提である独立した自由知識人層の分厚い存在は
育たなかった。中韓では知識層=官僚なのであり、必然的に自由知識人層は
生まれてこない。

中国・朝鮮の読書人・両班とはすなわち科挙試験に合格したり失敗したりする
人々のことであり、科挙試験の中心は儒教の経典と思想である。論語的な
思考法に馴染んだ頭脳からは物事を論理的、実証的に考えるような科学の
精神は生まれてこない。中国古代の思想家たちの関心は政治や軍事、道徳論
や人生論などの人間論に集中していて、自然の万物や宇宙に対して好奇心を
抱くことはなかった。中国と李氏朝鮮においては思想的、知的風土において
産業化、近代化を生む土壌としての価格の精神は育ってくることはありえな
かった。

中華思想の文明観とはこの世界において中華文明こそが唯一の文明にして
最高の文明であり、中華こそが世界の中心であり、世界の文明センターで
あるという考え方である。

中華思想の骨格は➀中華文明が世界唯一の文明であること。➁中華文明に
教化されるかどうかは人間と禽獣を区別する基準であること。③中国の読書人
こそ、この唯一の文明の担い手であること。④儒教の思想と礼儀は文明の核心
であること。朝鮮人の中華思想はまず、自分たちが中国の文化と文明、すなわち
儒教の思想と礼儀をきちんと習得していることに依拠している。李氏朝鮮の知識
人は中華文明の一員であるかどうかは住む地域ではなく、中華文明のコアと
なる儒教と礼儀の受容と履行によって決まると考えている。だから小中華と
誇るのだ。

聖徳太子の主導下で出された日いづる処の天子の国書は中華帝国伝統の
世界観と隋の皇帝を頂点とした当時の国際秩序に対しての挑戦状だった。
自国を飛鳥以降の仏法の興隆と広がりにおいて仏教先進国と位置づけ
仏法という普遍的な世界に身を置くことで中華世界を見下ろすまでの心情的
優位へと導いた。日本人は独善的な中華文明にとらわれていなかった。

大和朝廷は七世紀の唐帝国の出現と対外侵略によって外来の脅威に対応
し、国防体制を強化するために中国から律令制度を導入した。そして脅威が
なくなると、公地公民の土地制度消滅に始まり、律令制度は消え去った。
日本文明と西洋文明の類似点は封建制度を持っていたことである。
大陸文明との最大の相違はそこである。

宗教的権威の教皇と国王の政治権力があり。また一国の中に王権と各領主
の領有権が並立する二元化権力構造があり、それぞれの権力中枢の中間
地帯において自治都市やブルジョワジー層が生まれ王権や教皇権と対立。
自治都市においてブルジョワジー層の経済力を土台にして自由知識人層が
成長し、合理的思考を重んじるルネサンス運動が展開され、近代科学が発展
そのなかで近代技術が生まれた。対する中国・朝鮮の権力構造は中央集権
による官僚の収奪によりそれらは生まれてこなかった。
日本の場合は幕藩体制のもと兵農分離、参勤交代、石高制により商業社会
が出現した。流通網の整備と全国市場が形成された。町人のなかに思想家
哲学者、実学者などが生まれ学問を発達させた。彼らは科挙ではなく、自ら
の意思で学問探究を行い、自分の信念や思考に基づいて自分自身の学説
や思想を生み出せた。

江戸時代の商品経済の発達とそれによって生み出された分厚いブルジョ
ワジー層の存在ゆえに明治の殖産興業が民間の手に受け継がれ、飛躍的
に発展を遂げた。

日本人は平安時代から中華流の一元化権力構造の政治制度、社会制度に
決別を告げ、封建制に突き進んだからこそ、西欧世界と同様封建社会を構築
できた。そしてこの封建社会が最も繁栄した江戸時代において分厚いブルジョ
ワジーと自由知識人層の存在、合理的精神の科学技術の発達などにより
近代化の準備が整った。

日本人が知らないアジア核戦争の危機 日高義樹

著者は米国保守系シンクタンクであるハドソン研究所におられ、10年
以上前から中共の危険性を指摘しおり、結果、その通りになった。
米国国防総省、米国海軍や空軍、共和党議員など豊富な人脈からの
情報で質は高い。日本では安保法制が議論されているが、現時点では
それはもう古い。米中対決は次のステージ、核戦力の対決に移って
いるというのが著者の見通しである。

中国は海軍、空軍の大増強し、西太平洋を支配しようという軍事戦略
を描いたものの、米国をはじめとして日本、東南アジアが協力して対応
したため、通常戦力での海洋支配に失敗したというのが著者の結論
である。

中国はA2AD接近阻止・領域拒否戦略という戦略を採用し、海軍を大幅
に増強し、アメリカ第七艦隊を中国本土から遠ざけ、沖縄の海兵隊を
追い払うのが狙いだった。しかし、結果的にはこの戦略は失敗した。

中国側が宣伝している100隻を越える潜水艦は米海軍が調査した結果
西太平洋には全く脅威が存在せず中国側の誇大宣伝だとわかった。

また中国が次に登場させた新型クルージングミサイル(DF21)は、新しい
空母キラーが登場したとの触れ込みだったが、スピードが遅いうえに
搭載する火薬の量が少ないため、空母撃沈は不可能だった。

ロシアから買った空母・遼寧は1回の試験運転のあと、エンジンが壊れて
しまい事実上退役している。中国の技術では空母の大型タービンを作る
ことができなかった。10万トンクラスの空母を動かすには25万馬力の
タービンエンジンが4つ必要になる。また数トンの飛行機を受ける空母の
甲板を作ることができない。艦載機がフックを引っ掛けて止まる強力で
軽い鉄鋼性のワイヤーもつくれない。そして空母システム全般もつくれない。
システムとは数千人の乗組員の飲料水である海水を真水にする機器、
空母を守るソナー、航空機探索レーダー。地球規模の通信体制、さらに
衛生維持システム、巨大空母をなめらかに動かすシステムである。

ということで中国は通常戦力では米軍に全く歯が立たないことがわかった。

中国側は3つの脅威に怯えている。
1つ目はCIAによる内乱工作。香港の学生運動などは背後に米国がいる
のではないかと疑っている。2つ目は資源を掘り出そうと計画している南
シナ海と東シナ海で日本をはじめとするアジアの国々が軍事力でそれを
奪おうとしているのではないかと恐れている。3つ目は米国の第七艦隊
の追い出しに失敗したため、米軍の海上封鎖による経済の大混乱に
怯えている。

中国の経済圏はそのほとんどが東シナ海の2000kmに及ぶ。
中国は石油資源などの輸入品と輸出も全て海上輸送に頼っている。
この長いシーレーンを防衛する手立てを何一つ持っていない。
だから、中国が理不尽な軍事行動をした場合は、米海軍がインドら
とともに中国を窒息させるべく海上封鎖を敢行することになる。
それに中国が怯えている。

そして中国の新たな戦略は①核戦力の大幅な増強②サイバー攻撃
③宇宙戦、衛星攻撃により米軍の統合システムに打撃を与える。
米国は宇宙戦争の帰趨が米国の命運を決めると危機感をいだいている。

米国国防総省の対中戦略を分析しているマイケル・フィルスベリー博士
は、中国は核兵器を抑止力とは考えていない。実際に使うことのできる
兵器だと考えている。戦いを有利に進めるための兵器として使おうと
していると指摘している。その理由は、米露が核兵器を削減している
のに、中国は膨大な核兵器を製造保有している。これには米国の
エアシーバトル戦略に勝てないと判断したからである。更には、中国は
核兵器の効果を認識しており、日本、韓国、台湾などを脅すのに最も
有効な兵器だと考えている。

東アジアは偶発的な核戦争が起こる可能性があると著者は指摘している。

中国の指導者・習近平は核戦力によってアメリカと対決し、超大国の
立場を確立しようとしている。同時に軍事力を背景に中国の威信と政治力
を使って人民元を国際通貨にしようとしている。習近平のこうした考え方は
19世紀の古い国家指導者の考え方と同じである。

中国は直接、間接の援助をアフリカ諸国に与えたが、無償ではなく、企業
に対しては見返りに商品の販売権を奪うなど阿漕なことをした。
ヨーロッパの国々はパテントや資金を提供することによって、アフリカの
企業をアフリカ人の手から奪ったが、中国は中小企業を奪ったと言われて
いる。中国がアフリカで嫌われているのは経済援助を与える代わりに
内政干渉ともいうべき、国内政治への介入を行うからである。

中国は国家企業という形態をとりながら経済を拡大しているが、世界経済
を豊かにしようという気持ちは全くない。中国経済の拡大を、世界経済の
拡大につなげようという考えが全くない。中国はいまだに一党独裁であり
中国経済は国家経済で、経営者は官僚や軍人である。
世界経済を豊かにという発想をもちようがないのだ。自国さえよければいい
という利己的な発想が、軍事的な立場だけを有利にしようという考えに
つながっている。中国経済が行き詰っているのは、中国のことだけを考える
やり方が世界で通用しなくなっているからだ。

中国は世界戦略を持っていない。中国は世界をどうしようとしているのか。
世界でどのような役割を果たそうとしているのか、どのような国になろうと
しているのか、全く明確ではない。

そして著者は日本の非核ユートピア思想は中国核戦力の大増強によって
終わりを告げたといっている。核のない世界というユートピア的な考え方が
支持されたのは、米国の軍事力が卓越して強力だったからだ。
アメリカの専門家はまず日本人のコンセンサスをつくりあげ、そのもとで
合法的な軍事力と、それを行使する体制をつくりあげ、そのうえで効果的
な戦略をたて、軍事措置をとらなければならない。

戦争、国家戦略というのは国の存続を図るためにあらゆる努力をしなけれ
ばならない。国民的な総意と同時に、極めて高度な専門的な判断と行動が
必要になると著者は指摘している。


巨龍の苦闘 津上俊哉

○危機感に支えられた政権

・習近平登場後の四つの変化

①空前の権力集中

党総書記、国家主席、中央軍事委員会主席を兼ねるのが通常ですが、
それに加えて、国家安全委員会主席、全面深化改革指導小組、財政経済指導小組も
兼ねている。

中国は元々集団指導体制を建前としていた。
共産党政治局常務委員7名のうち6名を彼の部下にした。
権力集中が起きるのは難局に乗り越えるには強いリーダーが必要だと考えた。

②空前の改革

三中全会改革は過去10年改革派が必要性を訴え続けてきたものの、十年無視
されてきた。それが急にどしどし採用されている。
高成長が行き詰った。社会問題もこのままではもたないという危機感が背景にある。

③空前の半腐敗追及

党・政府・軍の高官の腐敗が常軌を逸していたため、そうしなければ国民に申し開き
ができない。もう一つが政権の邪魔者を除去すること。周永康、薄熙来を腐敗容疑で
逮捕。

④空前の言論、思想統制

難局を乗り切るには体制内の多数派工作が必要で、経済や国家ガバナンス(統治制度)
について左派・保守派の嫌う右寄りの改革を行うために、彼らのために何らかの補償を
行う必要があり、言論・思想統制強化につながっている。

この先、経済も社会も状況は更に悪化することを見通して言論・思想を制限することは
やむおえないと判断している。

1.保守的な社会主義(左)と改革指向(右)の振り子のような歴史

・2013年7月12日、習近平は紅後代(革命元老子弟)と密会。
彼らは4万人おり、うち影響力ある人は2000人。そのうち85%左派15%が右派である。

・中国の経済・政治は左対右の間を揺れ動いてきた。

・左派と右派の定義

左派・保守派は伝統的なマルクス・レーニン主義理論、共産党勢力の権力掌握にこだわる。
半植民地化され侵略を受けた歴史からくるルサンチマン(被害者感情)が強い。
そのナショナリスト志向で西側とその普遍的な価値観(自由・民主・人権)に警戒感が強い
人々です。

これに対して右派は日本とは大きく異なります。
日本では保守的で国粋主義的な人々を指しますが、中国の右派は市場経済重視、改革志向、
西側の普遍的価値観にも親和性が高い国際協調的な人々です。

左派優勢の時代 毛沢東の時代。右派を迫害、抑圧した。イデオロギーを振りかざす党内権力抗争
            が続いたせいで、経済も社会体制もボロボロになった。

右旋回 それで経済も社会もにっちもさっちもいかなくなった1978年にトウ小平改革開放へと舵をきる。

左の巻き返し 天安門事件

右の再逆転 トウ小平は南巡講話で反撃。江沢民が社会主義市場経済を推進。93年に経済加熱と大インフレ

WTO加盟でさらに右へ。

左の巻き返し 危機的状況にあった国家財政と国有セクターの懐に金が戻ったことで、国有経済がどんどん
          復活

さらに左へ 08年のリーマンショックが起こり、成長の落ち込みを恐れた4兆元の投資は国有企業へ。

体制の振り子論 危機になると右派の政策、安定してくると左派への揺り戻しがある。

中国共産党三つの運動法則。

①ピンチがこないと政策の舵を右に切ることができない。

左派のDNAが優勢の集団であるので、危機に遭遇しないと右政策は受け入れらない。

②政策を右旋回させるときは左への補償が必要になる。

江沢民は改革開放政策を推し進めたが、代わりに愛国主義教育を行った。

③ピンチが去ると政策を左へ戻す復元力が働く

・習近平は再度右旋回させようとしている。

・習近平は三中全会改革を行おうとしている。しかしながら、改革がそこそこ軌道に乗って
 体制が危機から脱する展望が見えた途端に、振り子がゆり戻す歴史を繰り返すのでは
 ないか。全ての改革が習近平の権威の下に進められようとしている。
 三中全会の改革が目指す新しい中国は権威体制とは別物だろう。

2.投資・信用バブルの終焉 高成長持続の幻想は崩壊した

投資・負債頼みの成長モデルはもはや続けられない。国全体のバランスシートの劣化が
起こっている。

中国経済は投資、消費、輸出(マイナス輸入)の3つの重要項目を成長貢献度で測ると
GDP成長に対する投資の貢献度は52.5%と世界に例がない。
今すぐ投資依存度を下げるリバランスをしないと、疑い無くハードランディング(経済の大きな落ち込み)
がくる。2014~2022平均GDP成長率は理想的な展開で5.3%。状況が悪ければ2.8%。2020~2022年は
マイナス成長になる。

中国経済は2つの選択に直面している。
一つは信用膨張のペースを急速に落としていくやり方。
雇用が保たれるように3%成長、もしくはやや下回るようにコントロールする。
これをロングランディングという。
もう一つは成長低下を防ぐために信用膨張を許していくやり方だ。
これはソフトランディングという。しかし、これは向こう何年は6~7%成長を
保てるが、その後ハードランディング型のひどい成長低下と失業の急増が
待っている。

資金調達の簡単さに幻惑されて、行け行けドンドン式に投資すると、本来
やるべきでない、値打ちのない投資に手を出すことになる。
投資バブルの結果、利払いは問題ないが、元本返還まで金が回らない
低収益な投資事業が山のように築かれる。

・バランスシートの劣化

債務者企業は、まず他の事業の儲けを回して元本償還に充てようしたり、
他の金融機関から融資を受けて銀行に元本を返したりする。
それが難しくなると、銀行からの借り換えや償還期限の延長を認めてもらう
方法になる。

償還期限を延長すれば、当初の約定期限に銀行に元本が返ってこなくなる。
借り換えも、本来なら新しい貸出先に貸すべき金をもう一度既存先に貸すの
ですから、本当の意味で金が銀行に戻ったわけではない。
債務者企業が他の儲けを回して元本償還に充てても、その分企業の当座預金
が減り、銀行が貸出できる資金が減るので結局同じになる。

不採算な投資がマクロに積み上がると、経済全体で融資に回せるお金が減る。
借金は積み上がっているが、経済全体のパイは大きくなっていない。
その結果、金詰まりが起きやすくなる。

儲けの出ない資産とそのための負債が膨張し続けると、国全体のバランスシート
が劣化する。症状が進行すると、金回りが悪くなるだけではなく、銀行が莫大な
潜在損失を抱えて体力が奪われ、金融を仲介する力が低下していく。
政府は症状を緩和するために金融緩和をするが、バランスシートの傷が癒える
訳ではない。世間がこの傷の深さに気がつけば、取り付け騒ぎが起こる。
経済の血流が止まる事態になると、真性の金融危機が起こる可能性がある。

以上のように、資金需要と供給両面が萎縮するのは、これまで経済成長を牽引
してきた投資が減速してきた兆し、つまり、ポストバブル特有のデレバレッジ(債務圧縮)
現象が中国でも始まったことがわかる。

不良資産・不良債権の増大は二つの面で経済に悪影響を及ぼす。
一つはフロー(期間内の流量)の問題であり、経済の資金循環が悪化するということ。
もう一つはストック(溜まり)の問題です。資産台帳に計上されているが、実際には
キャッシュを生まない名ばかり資産は、帳簿上ほどの簿価の価値はないし、そのため
に借入れた負債も潜在的に不良債権化しています。こういう資産、債務の毀損部分は
すぐに処理をしなければならない。

○新常態(ニューノーマル)の本質 ポストバブル期が始まる

新常態の中国経済。
もはや過去30年のような高成長は可能でも、必要でも、受容可能でもない。
今後は質を重視する中高速成長の時代であり、改革をしっかり進めば中国の未来は明るい。
国民はニューノーマルに慣れて平常心を保つべき。

成長目標を達成するための経済刺激、政府の直接投資に頼ろうにも、その余地は大きくはない。
借金投資頼みの成長から、市場手動の成長モデルに転換すべき。

金融緩和を進めるにあたって利下げだけではなく、預金準備率の引き下げが大きな課題になる。
2000年代に中国の高成長を続けた結果、世界中で人民元はこの先上昇するという強い期待が
生まれ、様々な形態で大量の資金が中国に流入した。
これに対して人民銀行は、銀行に預かり預金の一定割合(預金準備率)を強制預金させて
資金が市中に出回らないようにした。

①ニューノーマルを前面に出す。投資の主たる成長動力として政府が主導する成長モデルから
 イノベーションと市場機能を重視して、新しい成長モデルへ転換を図ろうとする三中全会改革
 と合う認識である。中国コスト優位性の終わり、人口高齢化の進行、環境制約、過剰設備問題
 など負の側面にも踏み込んでいる。

②経済下振れを認める。財政赤字が増えることは辞さないし、金融もさらなる緩和を示唆。

③目標成長率は今後さらに低下。

・地方財政改革

①予算の見える化

②地方財政の役割限定 地方財政で支出できる金を公共的なものに限定する。
                 民間供給可能なインフラはPPPによってできるだけ財政の外側にだす。

③立法機関(人民代表大会)による予算統制、監督の強化。

・中央による統制の強化

①地方政府の財源調達を地方債発行に限定する

②地方債発行額を中央が統制

4.三中全会の経済改革 新しい成長エンジンを育成する

①規制緩和

ネガティブリスト方式の導入。行政許認可制度の廃止または権限委譲。

法人登記改革

上海自由貿易試験区

金融規制の緩和

貿易投資の自由化

・国有企業の改革

①混合所有制の発展

②資産管理から資本管理へ

③業種の選択と集中

④コーポレートガバナンス改善

・中国経済は中期的には生産性を向上させられるかどうかが成長持続の鍵である。
 長期的には少子高齢化の進行による成長率低下の運命は避けられない。

5.国家ガバナンス改革の本質 統治制度は行き詰った

三中全会ではガバナンスの改革として依法治国改革が挙げられた。
つまり法によって国を治めるということである。

司法制度改革。
地方都市の法院、検察院の予算、人事、庁舎管理の改革がポイントになる。
全てを市の上の省レベル、省政府ではなく、省級の法院、検察院の所管にするというもの。
こんにち中国が直面する最大の問題は地方政府の力が強すぎるということ。
権限や予算をたくさんもっているというだけでなく、その権力行使に外部からのチェックが
入らない、やりたい放題を生んで、国民の権利侵害、経済の歪などを生んでいる。

もうひとつの司法改革のポイントは裁判官・検察官の審判権、検察権とその責任を強化
して、職務執行の独立性を高める。

鍵は党・政府を法に従わせることにあり。

6.核心利益から周辺外交へ

中国はここ数年間、挑発的な外交、安保姿勢で周辺国を不安に陥れましたが、体制存続
を託された習近平は内政面での改革を進める妨げにならないような平穏な国際環境づくり
に舵を切ろうとしている。領土領海絡みで強硬姿勢を示すといったリスクの大きな方向から
経済大国外交へとシフトさせようとしている。

国民の目をそらすために対外挑発しているのか?
①体制の問題が山積みであり、社会不満が充満する中国では対外的な緊張を煽って
  ナショナリズムに火をつけるとあとで消化するのが大変。

②必然のないところに人為的に緊張を作り出して国民の目をそらすのは邪道。いずれ
 内政の方へ戻っていく。その時問題を正面から取り組まなかったつけを払うことになる。

③中国の政体は我々とは異なるということ。習近平は2022年まで政権担当を約束された
 指導者である。手段を選ばず人気取りをしなければならない理由にはならない。










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