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AI時代の新・地政学 宮家邦彦

人類国家間の戦いは陸戦に始まり、次に陸と海の時代を経て
20世紀後半には部隊が空へと進化し、今やサイバー領域と
宇宙空間までに戦闘領域を拡大しつつある。そして今注目
されるのがAI(人工知能)である。AIは日本においては専ら
経済活動への応用、諸外国でも軍事、戦術面での活用が
取り沙汰されるのがせいぜいである。しかしAIは軍事面での
人間の関与を低下させ、国家間の地理的な距離を変質させる
という点で、地政学上・戦略論上ゲームチェンジャーとなりえる
要素である。

伝統的地政学とはある民族やある国家の地理的状況や歴史
的経緯に注目し、当該国家、民族、関連地域への脅威および
その対処方法を考える学問である。しかし、特定の国家が有
する地理的、歴史的状況はそれぞれ大きく異なる。
安全保障上の利害関係に関しては全世界共通の傾向や法則
はそもそも存在しない。今後はIT革命で従来の陸海空に加えて
サイバー領域、宇宙空間がますますクローズアップされる。
地政学における地理的距離の意味は相対的に低下し
AI革命が地政学の基本セオリーに変わってくる。

中東の地政学は比較的単純だった。同地域は基本的に陸続き
で強力なシーパワーは存在しない。そこで自然の要塞を持ち、
人口と領土と経済力、軍事力に秀でたランドパワーが覇権を
競ってきた。過去数千年間で地政学に大きな変化はない。
ローマ、ペルシャ、オスマンなどお帝国。現在もエジプト
イラン、トルコが覇を唱えている。ところが最近の情報通信処理
AI技術の飛躍的進展は伝統的地政学が示す優位、劣位の環境
を逆転しつつある。従来の強者が従来の弱者に敗れる可能性が
出てきた。サイバー戦の世界では防衛より攻撃の方が遥かに
安上りである。特に攻撃ソフトを扱う闇市場では入手コストが
大幅に下落している。AI技術による米中の力関係の変化は
日本の安全保障に直結する重大な問題だ。日本もAI軍事応用
を本気で始める必要がある。

中国のAI技術革新は目覚ましい。しかも、その多くは中国国内
の社会管理や言論統制など独裁政権を維持するために活用
されている。個人のプライバシーを保護することなく、10億人もの
ビッグデータを活用できる中国は管理体制を完成させれば
次のターゲットは潜在的な敵性国家である日本となるだろう。

①AIが国家軍事戦略を変えるということは、AIが核兵器に代わり
戦略兵器になりえる。戦略兵器とはそれだけで敵の戦意を喪失
させ自らの勝利を保証する兵器である。②AI兵器が敵の戦意を
喪失させるとは、核兵器を使わず、AI兵器だけで敵国の大量破壊
が可能になるということだろう。③現在の核兵器は使いにくい兵器
となりつつあるが、AI兵器は従来のタブーだった大量破壊を容易に
かつAIだけの判断で実行し得る④これを阻止するには敵のAIを
減殺する対AI軍事技術を実用化していくしかない。

日本のなすべきは戦後、空想的平和主義からの脱却。AI技術の
軍事応用に関する研究者の養成、AI技術の軍事技術応用研究
への予算配分。対AI兵器技術の重点的な研究開発などが挙げられる。

いまの日本は国家としての大戦略を欠いている。大戦略を立案
するには、20~30年後の世界の国際政治・軍事戦略環境に
ついて冷徹な見通し・シナリオを持つ必要がある。歴史の大きな
流れを掴んでいれば大戦略の立案は容易になる。
戦略的な思考をするためには日々のマイナーな事象ではなく
今後20~30年後に起こる歴史的大局の原因・前兆となる
メジャーな事象を直感力で見出し、過去から将来への歴史の
流れを正しく見極めることが不可欠だ。

歴史の大局が発生するためには、それに至る一連の流れが
必ずある。その流れを左右するのが歴史のドライバーという
概念だ。国家の大戦略立案に資する歴史的大局観とは
過去の事実の中から国際情勢を左右する要因である
ドライバーを直感的に抽出し、国際情勢を左右するほどで
ないニュースをエピソード。大きな歴史とは無関係な事象を
トリビアという。エピソードやトリビアを極力排除し、過去を
検証して初めて持てる未来の感覚なのだ。

何がドライバーなのか、それ以外のエピソード、トリビアなのか
自問することである。歴史を学び、常に過去と照合する癖を
つける。知ったかぶりは厳禁、知的正しさこそ武器になる。
筆者は現在のドライバーは欧州ではロシアのクリミア侵攻。
中東では米軍の撤退。東アジアでは中国公船による尖閣
領海への侵入だ。ロシアの侵攻でポスト冷戦が終わり、米軍
の撤退でイラクとシリアが破綻国家化し、中国が東シナ海の
現状を変えた。いずれも地域情勢を左右する力がある。

力の真空状態は基本的に最強の部外者が最大の分け前
を得る。最大強者が動かない場合は弱い部外者でも分け前に
与れることがある。部外者が介入しない場合には破綻国家に
なるか、新たな独裁者が生まれる。米軍撤退後の南シナ海
米軍撤退後のイラク。日独敗戦による米中ロの大国化などが
例である。

中国人とアラブ人の共通性。①世界は自分中心に回っている
と考える②自分の家族・部族以外の他人は信用しない③誇り
高くメンツが潰れることを何よりも恐れる④外国からの援助
は感謝すべきものではなくさせてやっているもの⑤都合が
悪くなると自分はさておき他人の陰謀に責任転嫁する。
実はこれは中国人だけではなく発展途上国の国民が共通
して持つ劣等感の裏返しなのである。

国家戦略には4つのポイントがある。
①敵を一つに絞る②正しい同盟国を選ぶ③負ける戦争を
戦わない④勝てる戦争をできれば戦わずに勝つ。

元外交官の著者の高い見識は勉強になります。
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学校では教えてくれない地政学の授業 茂木誠

1945年の敗戦のショックで日本人は戦略的思考を失ってしまった。
戦略(ストラテジー)と戦術(タクティクス)とは対になる言葉である。
あの島を奪うにはどれだけの兵力と武器が必要で、どこからどこから攻めるか
現場の部隊長が考える個々の作戦が戦術です。これに対して戦争に勝つため
には、どこの国と同盟関係を結び、どのような産業を興し、どうやって情報を集め
国際世論アピールして味方を増やすかといった政治・外交・経済・思想も含めた
長期的、大局的な作戦を練るのが戦略である。

地政学とは国家間の対立を地理的条件で説明をする。
いろいろな外交政策や場合によって戦争っていうことにつながることを
理論化する学問である。

教科書の歴史は善と悪があり、正義は勝つという歴史観である。
これを進歩史観という。地政学は国際紛争を国と国の縄張り争い生存競争と
見る。教科書通りに学んだ人ほど世界の常識からずれていく。
地政学とはリアリズム的な見方のひとつである。
理想主義だと平和になっているはずだが、そうなると今の世界を説明すること
はできない。

世界の見方には理想主義とリアリズム(現実主義)がある。
リアリズムは国家間の生存競争として国際関係を説明する。
地政学はリアリズムのひとつである。地理的条件から外交防衛政策を考える。

アメリカは地政学的には島である。
大陸というの1個だけでユーラシア大陸だけである。
ユーラシア大陸を世界島とも言う。
アメリカは周辺国どこからも干渉されないから島ということになる。
この地理的条件からアメリカの外交方針が生まれる。

島にこもるのがモンロー主義、積極的に外へ出ていくのがウィルソン主義。
モンロー主義は大陸のゴタゴタに巻き込まれたくない。兵力にゆとりがあるから
積極的に海外へ派兵して世界の警察官をやる。これが国際貢献戦術ウィルソン主義。

民主党は福祉国家、国際協調主義。
共和党は自助努力を求め、一国主義。
共和党支持者は白人、イギリスから渡ってきた人
民主党は移民、白人のあとから来た移民で19世紀以降の新しい移民。イタリア系、ユダヤ系
ヒスパニック(スペイン語を喋る人)、あとは中国系。

アメリカの中国進出を日本が脅かしたことが、日米戦争の原因となった。
過去も現在も日米関係は常に中国問題である。

アメリカにとって中国は常に市場・投資先である。

アメリカの金融資本・国務省・民主党が親中派、軍需産業・国防総省・共和党が対中強硬派。

中国にとって最大の脅威は遊牧民やロシア帝国、北方のランドパワーだった。
地政学は大陸国家ランドパワーと海洋国家シーパワーのせめぎあいとして世界を見る。
中国はランドパワー。海の戦いより陸の戦いをしてきた国である。

19世紀には、海からシーパワーのイギリス、日本に攻め込まれ、清王朝は崩壊した。
初めてシーパワー勢力が中国を襲ってきた。背後からランドパワーのロシアが迫り、
海からは日本、イギリスなどのシーパワーが迫ってくる。更に国内では漢族が独立運動
を起こしてボロボロだった。

20世紀前半には、ソヴィエト・ロシアと組む共産党と、米英と組む国民党と内戦を続け
共産党が勝利した。

トウ小平がシーパワーの国家戦略を立て、中国軍は長期計画に基づいて行動している。
ランドパワーは陸軍重視、農業重視だった。これを改革開放路線によりシーパワーへ傾いて
いく。ソ連崩壊で北の脅威がなくなった。北に備えていたエネルギーを南へ向けられるという
ことで海洋進出してきた。

中国の海洋進出を抑えるには、➀軍事的空白をつくらないこと➁北方の脅威ロシアを育てること。

ランドパワーが無理に海洋進出すると、かつてのドイツのように失敗する。

半島国家の朝鮮は、常に大陸の中国の動向に翻弄されてきた。
隣国の中国の王朝が時々代わるため、いままでやっていたことを全部否定して新しい王朝へ
乗り換えるという手のひら返しをしてきた。中国で新しい王朝ができると朝鮮でも王朝の交代
が起きる。

中国からの侵略を防ぐためには、中国の王朝と一体化するしかなかった。
モンゴルという敵と一体化することで自分たちの身を守った。

モンゴル支配の反動から、朝鮮は朱子学を採用し、小中華思想を持つようになったが経済は
停滞した。朱子学は儒学の一派で基本的にはランドパワーの思想である。
農業が正しく、商工業は間違っている。劣っているという商業蔑視の思想である。
文明人を中華という。中華が文明で周りの民族は夷狄である。
国が小さいから小中華ということである。漢文は中華文明の文字であり、ハングルのような
発音記号のような文字は恥ずかしいと考えた。明が清に滅ぼされ、明の思想は我々が
受け継いだ。つまり世界唯一の文明国朝鮮と考えた。

当時、日本はシーパワーなので商工業が盛んだった。江戸時代は貨幣経済で大阪は銀
江戸は金が流通しており、藩札もあった。世界最初の先物市場は大阪の米市場であった。
ほとんど西ヨーロッパと同レベルで経済が発展した。

近代朝鮮史はランドパワー派(事大党/親中派)VSシーパワー派(開花派/親日派)の抗争の歴史。

日清戦争と日露戦争で日本が勝利した結果、朝鮮は初めてシーパワー側に取り込まれた。

日本の敗戦後は、ランドパワー派が北朝鮮、シーパワー派が韓国を建国し、朝鮮戦争を起こした。

冷戦終結後、台頭する中国に韓国が急接近する一方、北朝鮮は中国を警戒し、核開発を進めている。

ロシアはモンゴル帝国を継承したランドパワー国家。

国土が広大すぎるロシアは、アジアとヨーロッパ、二正面作戦に対応できない。

清朝から沿海州を奪って日本海へ進出。日本から千島列島を奪って太平洋進出を図った。

シベリアの人口減少が続くロシアにとって、隣国中国の人口圧力は重大な脅威である。
日本との協力が必要。

ウクライナ紛争で欧米と対立するロシア。日本にとっては北方領土問題解決のチャンス。

ロシアにとってウクライナは穀倉地帯。クリミア半島には黒海艦隊の軍港があるから
手放せない。

アメリカはウクライナをロシアから切り離し、NATOに加盟させようと画策してきた。

ウクライナ人自身が、東の親ロシア派(ランドパワー派)と西の親欧米派(シーパワー派)
に分裂しているのが、ウクライナ紛争の最大の要因。

米露関係の悪化で中露が接近すると、ユーラシアにランドパワー同盟が生まれる危険
がある。

欧州移民問題は、中東の植民地支配の負の遺産。

ソ連の支援で社会主義化を進めたアラブ諸国は、経済的に破綻し、欧州の移民を
生み出した。

欧州諸国は労働者不足で移民を受け入れたものの、景気後退で移民の2世、3世が
職を失った。

移民は制限できるが、難民は受け入れ義務が生じる。そして両者は区別できない。

ヨーロッパは半島だが、イギリスは島である。

イギリスはヨーロッパ統一を恐れ、各国が常に争うように仕向けてきた。(オフショア・バランシング)

イギリスの軍事力は、植民地拡大に使われてきたが、第二次大戦後の植民地独立で
全てを失った。

EU結成の真の目的はドイツ封じ込めだったが、経済的にドイツに仕切られている。

ドイツが主導するEUへの反発、難民受け入れへの抵抗が、イギリスのEU離脱に
走らせた。

イラクとシリアは、本来は同じアラブ人で、オスマン帝国の一部だった。

イギリスとフランスがサイクス・ピコ協定を結んでオスマン帝国を解体した。
イラクとシリアの国境線はこのとき引かれた。これは満州国と同じだ。
満州人が中国より独立したという形をとった。

第二次大戦後、イラクとシリアで革命が起こり、親ロシア派(ソ連派)のフセインと
アサドが政権を握った。

アメリカは湾岸戦争、イラク戦争でフセインを打倒し、アラブの春でアサドを揺さぶった
が、アサドはロシアの支援で持ちこたえた。米国が親ロシア派だからけしからんという話。

混乱に乗じてイスラム過激派ISが台頭した。
サイクス・ピコ協定の打破、貧富の格差、つまりアッラーの前に万人平等であるから
分配せよという話。コーランに書かれた時代のイスラムがもっとも美しく純粋である
というのがイスラム原理主義である。

国境線の引き直しと、各民族、宗派への大幅な自治権の付与が紛争解決への道。
オスマン帝国は自治権の付与によって400年平和に統治した。

イランはロシアの南下を阻止する防波堤として、また産油国として米・英の支配を
受けてきた。

イランのナショナリズムは、イスラム教シーア派の思想と結びつき、イラン革命を
引き起こした。

アメリカは、サウジなどスンニ派アラブ諸国を支援してイランに敵対させた。

イランはアメリカに対抗して核武装を進めてきた。

スンニ派武装組織ISという共通の敵が現れたため、アメリカはイランに急接近し
制裁を解除した。国内にシーア派を抱えるサウジアラビアはイランの台頭を警戒。
アメリカとの関係も悪化している。

多民族・多宗教世界だったインドをイギリスが占領し、宗教対立を煽って分割統治
した。

イギリスは植民地インド防衛のため、アフガニスタンとチベットをロシアに対する防波堤
とした。

独立後、イスラム教国パキスタンは、ヒンドゥーの大国インドに対抗してアメリカ、中国と
結んだ。

中国のチベット併合、ダライ・ラマ14世のインド亡命で、中印関係が悪化。インドは
ソ連と同盟し、ソ連崩壊後のインドはアメリカに急接近している。

日本軍はインド独立を支援した。歴史問題や国連改革問題で日本とインドは協力できる。


大国の掟 歴史×地理で解きほぐす  佐藤優

表面的な情勢がどう動いたとしても変動しない本質を把握すること。
言い換えれば、アメリカをはじめとする大国を動かす掟について理解を深める
ことである。掟を把握するにはどうしたらよいか。国際情勢の背景にある変わらない
ものに着目することである。

歴史と地理この二つの不変の要素が現下の国際情勢を規定している。
歴史はアナロジー(類比)的なものの見方を訓練することに大いに役立ちます。
この考え方を身につければ未知の出来事に遭遇したときでも、過去の出来事と
類比を考えて、冷静に分析できる。先行きの見通しにくい時代であればあるほど
アナロジー的思考は大きな力を発揮する。

地理を学ぶ意義はまさに長い時間が経っても変化しないということに尽きる。
海がない国は海がないという地理的条件、半島国家は半島という地理的条件
に規定される。国際情勢のような複雑な問題を解くためには動かない要員を
知ることが何より近道となる。

このような地理的思考を国家戦略に活用したものが地政学と呼ばれるものである。

1.英米を動かす掟

アメリカとイギリスは孤立主義という一致した動向を見せている。
これは海洋国家という地理的な特徴が浮き彫りになっている。
トランプ現象は孤立主義の現れである。その孤立主義はモンロー宣言に象徴される。
モンロー宣言とはアメリカの裏庭である中南米への影響力を拡大し、同時にヨーロッパ
の影響力を排除することを目的としたものである。

アメリカの帝国主義化は孤立主義と矛盾するものではない。
帝国主義を拡大させながら、アメリカは国際的な揉め事には極力首をつっこまないように
している。

思想面から見た場合、アメリカの孤立主義は啓蒙主義の影響を強く受けていることがわかる。
啓蒙思想とは暗闇の中でロウソクを一本ずつ灯していくと、明るさが増し、周囲の様子がよく
見えるようになるというモデルである。知識が増えれば、社会は豊かになり、人間は幸福に
なるという物の見方、考え方である。

啓蒙主義は物体であれ、人間社会であれ、個が集まって全体が成立すると捉える原子論的な
考え方をモデルとしている。

トランプの主張の核にあるのは、アメリカを真珠湾奇襲以前の姿に戻すことである。

新自由主義は、ソ連崩壊によって東西冷戦が終結した1991年以降、さらに加速していく。
社会主義革命の恐れがなくなれば、資本主義は遠慮する必要もないため、いくらでも暴走
できる。同時に、この時期から、ヒト・モノ・カネが国境を越えて自由に移動するグローバル化
が急速に進行していきました。

新自由主義は個人をアトム(原子)化してバラバラにする。新自由主義には、経済主体が
行動するにあたって、障害になる規制を全て除去するという排除の思想が組み込まれている。
新自由主義のゲームのルールでは、市場で勝利したものが成果を総取りできる。
その結果、グローバル資本主義のもと、資本主義は巨大な格差を生み出し続けることになった。

アメリカ的な民主主義とは、白人の民主主義ということである。

イギリスはEU離脱を選択した。イギリスはかつての栄光ある孤立を選んだということ。
92年EU領域を決めるマーストリヒト条約が調印されユーロの使用が決まった。
イギリスは単一通貨を使用せず、独自通貨のポンド使用を継続した。
EU加盟国といってもヨーロッパ大陸の加盟国とは異なる道を歩んできた。
これも栄光ある孤立が底流にある。

イギリスはEU離脱を選択することで国内政治にこれまでにない大きな分断を
もたらした。これはトランプ現象と共通するものである。

両国が孤立主義を選択することができるのか地政学的な補助線を入れる。
それはどちらも海洋国家であるからだ。海洋国家は海を通じてどこへでも
行ける。この地理的条件は決定的に重要である。
いくことができるのなら、いかない選択肢もあるということである。

シーパワーとランドパワーを比べたとき、シーパワーの優位性は海から陸を
囲むことができる点にある。点と線を押さえればよい。
シーパワーを制するということは、世界的なネットワークを維持できるという
ことに他ならない。だからこそ、イギリスもアメリカも覇権国になることができる。
自由主義の背後にはシーパワーを持った覇権国の存在がある。

国内の憂いが拡大すれば、点と線の支配に頼るシーパワーも弱体化して
しまいます。人的にも経済的にも、国内に力を注がなければならなくなる。

2.ドイツを動かす掟

第一次世界大戦も第二次世界大戦も膨張するドイツとそれを封じ込めようとする
英仏を中心とするヨーロッパ諸国との対立として捉えることができる。
現在のEUも、その根本では独仏が同盟を組むことで、ドイツを全ヨーロッパに取り込む
ことが大きな課題となった。

1888年を境として、ビスマルク外交からウェルヘルム二世の世界政策へ転換したことが
20世紀のドイツの運命を大きく変えた。ビスマルク外交のポイントはフランスの孤立化にある。
ビスマルクは外交によってヨーロッパの安定を図ろうとした。それがウェルヘルム二世によって
海軍の大増強をはかり、イギリスと建艦競争を展開した。

帝国主義下のドイツ、ナチス・ドイツ、そしてEUには明らかな共通点がある。
いずれも東方拡大をベクトルとして持っている。3B政策である。
それとあわせてドイツ人の民族結集をはかり、ドイツ帝国の世界覇権をめざす
イデオロギーであるパンゲルマン主義という思想が浸透していった。

マッキンダー理論は国家や民族を有機体的な生命と捉え、強い国家や民族が生き残って
生存圏を拡大していくのは自然の摂理だと考える。

シーパワーはユーラシア大陸を海から取り囲むことができる。
その結果、ヨーロッパとアジアの立場は逆転し、ヨーロッパはアジアのランドパワーを
政治的、軍事的に包囲できる立場となった。マッキンダーはヨーロッパ諸国が海上勢力
を拡大していた時代は、同時に、ロシアがシベリアを支配し、ロシア農民が南部に移住する
時代になった。ユーラシア大陸が鉄道網で覆われれば、ロシアのランドパワーは更に拡大
すると予想した。ユーラシア内陸部には鉱物資源が眠っており、海上貿易ではなかなか
アクセスできない。そこをロシアが制したならばかつてのモンゴル帝国のような存在になる
とした。

マッキンダーはユーラシア大陸の広大な部分は、まさに国際政治の回転軸に相当する地域だとした。

東欧を制する者はハートランドを制し、ハートランドを支配するものは世界島を制し、世界島を制する
ものは世界を制する。

東ドイツでは旧ナチスというだけで戦犯にすると国家の運営ができない状態だった。
そこでソビエト軍事政府はナチ党に所属していただ戦争犯罪にてを染めなかった党員に
社会復帰の道を開き、市民権や政治的権利を回復し。1948年非ナチ化終了宣言を行った。

EUができてもドイツの包摂は成功していない。
ドイツを野放しにしないために創設されたEUも、その経済面を見る限り、結局ユーロという
名の拡大マルクが席巻している。ドイツだけの一人勝ちで東方へEUは拡大している。

ギリシャは欧米が勢力圏としたが、支援の仕方に問題があった。
産業化の支援をしなかった。産業化すると工業が発展し、工場労働者が生まれる。
そうなると共産党の組織化がなされるからである。だから農業と観光だけの国にした。

ギリシャ債務危機はEUの南北問題を象徴的に示している。
この違いは南部はローマカトリックの国、北部はプロテスタントの国が多い。
プロテスタントは生まれる前から神に選ばれているという選民思想がある。
自分たちのこの世での成功は保証されている。一見失敗だったとしてもそれは神の
試練であると。世のため、人のために努力すれば神は喜ぶ。そこに生じる禁欲的
職業倫理が経済に結びつく。

カトリシズムは天国における来世を重視する。
人生たかだか80年。あの世は永遠である。だから人々は自分がこの世に貢献するよりも
天国に行けるよう教会に全て寄付しようという考えである。
教会にお金がたまり、豪華な建物を建て、教会インフラという形で富が蓄積する。

EUという帝国内での覇権を握っているドイツにとってもEU内の自由貿易体制を維持する
ことが富を蓄積する最善の手段である。

EUが財政破綻に陥った場合ギリシャを切り捨てたとして考えられるシナリオの一つが
ロシアの影響下に入るというもの。ロシア海軍がエーゲ海へ出口を持つことになる。
もうひとつのシナリオはISがエーゲ海の島々に入ってくるというもの。

EU最大の目的はナショナリズムの抑制である。
EUとは二度と戦争はしたくないという独仏同盟を中心とする西ヨーロッパの帝国と
考えなければならない。この帝国にはナショナリズムや民族を超えた、コルプス
クリスティアヌムという概念である。コルプスクリスティアヌムとはユダヤ・キリスト教
一神教の伝統であるヘブライズム、ギリシャ古典哲学であるヘレニズム、ローマ帝国
ラテン法の伝統であるラティニズムの三つの要素から構成された総合体。

ドイツは東方進出を終えた段階に入っており、逆にEU統合を維持するためのコストを
支払わなければならなくなっている。だからこそドイツ国内でも反EU勢力の発言力が
強まっている。

3.ロシアを動かす掟

国家の振る舞いは地理的諸条件に制約される。それゆえ地理的諸条件はイデオロギー
に先行する。プーチンの言う地政学には、国家は、地理的諸条件にもとづいて、最も
利益にかなう行為を選ばなければならない。

ユーラシア主義と緩衝地帯という二つの概念。
もともとロシア人という概念自体がユーラシア主義と深く結びついている。
ロシア語でロシア人はルスキーとロシヤーニンという二つの概念がある。
ルスキーは血筋の意味でのロシア人である。ロシヤーニンはスラブ系ロシア正教を
信じる白人だけの国家とは考えない。トルコ系、イラン系でイスラム教を信じる人々
モンゴル系のチベット仏教を信じる人々、精霊や呪術師を信じるシベリヤや北極圏の
少数民族などのロシヤーニンからなる帝国と捉える。ロシアは必然的に帝国となる
運命にあり、ロシアは欧州やアメリカ、アジアとは異なった論理と発展の法則もっている
というのがユーラシア主義者の主張である。

プーチンはユーラシア同盟が域外との障壁をつくる関税同盟であることを明確にしている。
リーマンショックに端を発する世界経済の危機を帝国主義的な経済ブロックを創設する
ことで乗り切ろうとしている。

狭義のユーラシア主義とは、第一次世界大戦後の1920年~1930年代にかけてソ連から
西欧に亡命した知識人が掲げた思想である。ヨーロッパとアジアにまたがるロシアは、ユーラシア
空間によって規定された独自の法則を持つ小宇宙である。

スターリン下のソ連外交の実態は、自国の安全保障を確保するために勢力圏を極力拡大する
という考え方で、帝国主義と親和的です。なおかつ、実際のソ連は国民生活のあらゆる部分に
国家が介入する極端な国家主義である。ユーラシア主義者はソ連のこのような帝国主義的体質
も肯定的に評価する。ユーラシア主義者は反共産主義者だが、親ソ連である。

ソ連崩壊後、中央アジアの諸国では部族を中心とするエリート集団が権力を握り、他方で経済的
困窮からイスラム主義が拡大している。

ロシアという国家を理解するうえで緩衝地帯という地政学的概念は決定的に重要である。
ロシアは国境を線ではなく面で捉える。ロシア人が線で国境を考えるのは、隣国が友好国の場合
に限られる。少しでも隣国が侵入してくる危険性がある場合には、線で国境を引いたとしても
国境の外側の一定の幅のところに緩衝地帯を持つことを重視する。
ロシアは平原であるゆえに、いつでも攻め込まれる不安がある。
だから緩衝地帯を持っていないと安心できない。

東ドイツ、ポーランド、ハンガリー、チェコスロバキアを併合しなかったのは、併合すると
西側諸国と直接国境を接することになり、衝突のリスクが高まるからである。
こうした緩衝地帯には、ソ連体制と同じではなく西側の要素を入れている。
これらの国では教会活動が比較的自由だった。

緩衝地帯は中央アジアでも重要な意味をもっている。
ロシアにとって中央アジアやモンゴルは中国との衝突を回避する緩衝地帯として作用している。
グルジア、クリミア、ウクライナに対するプーチンの強硬姿勢は緩衝地帯を失った危機感に
起因している。

4.中東を動かす掟

現在の中東情勢の真の原因は中東の地理的実態と合致しない欧米の政策である。
その出発点がフランス、イギリス、ロシアの間で結ばれたサイクス・ピコ協定である。

外来のものである固定という要素を無理やり押し込んでできているのが現在の中東
諸国である。この固定は非常に脆弱である。実際、アラブ諸国のほとんどが、国民国家
の形成に失敗している。民族を形成するうえで決定的に重要である民族教育がアラブ
諸国では不徹底だった。

人権の思想は、近代ヨーロッパの勢力拡大とともに、世界中に拡散していった。
近代化プロセスの中では、濃淡の差こそあれ、どの国にも人権思想が浸透していく。
その結果、人民の代表を選挙によって選出する代議制民主主義も定着していくわけ
です。人権の思想は、地域によってはイスラム世界にも入っていきます。
トルコ、イラン、インドネシア、パキスタンでも、民主主義という形式は取り入れられている。

アラブ世界だけは、人権から神権の転換が起こらなかった。だから現在でも神権です。
神権では、神が決めたことが全てであり、人間が自己統治する余地はありません。
そうなると急に民主化をすると多くの有権者はムスリム同胞団へ投票する。

シーアとは分派、党派という意味である。
もともとはアリーのシーアと呼ばれていた。
スンナ派は代々のカリフを正統と認めるイスラムの多数派です。
スンナ派はムハンマドの伝えた慣行(スンナ)に従うものを意味する。
イスラム法の解釈によって、ハナフィー派(イラク西部、トルコ、シリア、中央アジア、
エジプト西部、南アジアなど)マーリキー派(アラビア半島東部、北アフリカ)
シャーフィイー派(イエメン、イラク中部、エジプト東部、東アフリカ、東南アジアなど)
ハンバリー派(カタール、UAEなど)ワッハーブ派(サウジアラビア、アルカイダ)

ワッハーブ派はコーランとハディース(ムハンマド伝承集)しか認めていない。
成人崇拝も墓参りもしない。ムハンマド時代の原始イスラム教へ回帰を伝え
極端な禁欲主義を掲げている。

グローバルジハード論は、分散的なネットワーク型の組織原理に基づいている。

ISはほかのアルカイダ関連組織と比べてシーア派の殲滅を重視する。

今後中東が抱える脅威は核の拡散である。その震源地と考えられるのが
サウジアラビアである。

イランはかつてのペルシャ帝国へ。トルコはオスマン帝国へ回帰しようとしている。

5.中国を動かす掟

一帯一路とは、中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる
シルクロード経済ベルトと、中国沿岸部から東南アジア、インド、アラビア半島の沿岸部
アフリカ東海岸を結ぶ21世紀海上シルクロードである。陸と海の両方からユーラシア大陸
の東西を結び巨大なフロンティアを生み出そうとしている。地政学的に見ればランドパワーと
シーパワーを同時に展開してユーラシア大陸を囲い込むことになる。

中国は海洋戦略をとるようになった。
海洋国家のアドバンテージは、港を点でつなぎ、世界をネットワーク化できることにある。
海洋国家は覇権国になりやすい。ただし、海洋国家同士は折り合いが悪い。

人工島問題を理解するためには国連海洋法の基本的な知識が必要。
中国は1996年に国連海洋法条約を批准しているにもかかわらず、そのルールに背いて
人工島を作っている。

中国の海洋進出が進まない3つの理由
➀中国海軍の実力不足
➁海洋戦略の基本に反している。人工島など大人気ないことをせずに、各国の領海は
  狭めて航行の自由を広く認めていく方向を模索するべき。その方が中長期的に海軍力
  が強い国なら有利になる。

③新疆ウイグル自治区の問題である。近くのフェルガナ盆地で第二イスラム国ができる可能性。

ウイグル人はウイグル民族に属するという自己意識とムスリムであるという複合アイデンティティ
をもっている。民族独立運動には敏感だったが、イスラム主義について注意が甘い。

中国は内陸アジアとの攻防を経ることで形成されてきた国家である。

海の地政学は多く見積もって地政学の半分しかない。そして現代的意義を考えるならば
4分の1程度の重要性しかもたない。地政学の核心は制約条件を考えることである。

中国の一帯一路政策は海と陸それぞれに困難を抱えている。

地政学的に考えれば、日本は大陸の影響を強く受ける位置にある。
鎖国システムをを築くことで冊封体制脱することができた。





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