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情報機関を作る 吉野準

警視総監をされた方が日本においての情報機関設立の必要と
設立の際のポイントについて書いた著作です。

・人類史上もっとも古い情報収集装置は人間の目である。
 ある種の情報を収集しようとする場合、この一号型式に代わる
 ような手段は、未だ存在しない。フレデリック・フォーサイス

国際情報戦の中核を成すのは手作業としてのヒューミントである。

国際テロ防止には入国管理や警備を徹底する。国家安全保障
には外交と防衛を活用する。情報の漏えい防止には特定秘密
保護法などの効果的な運用を行っていく。これが基本である。

ただし、どの方策においても相手側の情報を収集することが
決定的に重要になってくる。相手の国や組織はどんな方針で
臨んでいるのか(先方の戦略)、そのためにいかなる具体策
を考えているのか(先方の戦術)、そもそも先方の内部はどんな
状態にあるのか(先方の実情)。こういう相手側の秘密情報を
インテリジェンスという。

国際テロ対策の基本は未然防止である。
未然防止ためには出入国管理の厳格化、警備の強化、そして
相手の手の内を知る情報、特に人的秘密情報(ヒューミント)
である。各国の情報機関は同業組合である。ギブアンドテイク
の原則がある。手持ちの情報がないときはあとからお返しする
のが常識である。自前の情報を持つためには自前の情報機関
が必要である。

・ヒューミントの工程表

情報収集は注文生産方式である。
日本の場合、注文主は内閣に設置された国家安全保障会議
(日本版NSC)になる。情報対象はどこか?具体的な国家、地域
組織。情報内容は何か?政治関係、軍事関係、テロ計画など。
そして方針が示されると、人的手段による情報収集活動を行い
他のインテリジェンス組織による科学技術情報(テキント)と合わ
せて総合的な結論をだす。

自らエージェントとして売り込んでくるウォーク・インは曲者が
多い。これらは相手側の意図を受けた者が多いが、時間を
かけて徹底して信頼できるか調べる必要がある。エージェントの
目標に立てるべき対象はリクルート困難だと思われる相手だ。

情報機関の工程表を作成するのは管理部門である。
現場部門と協議のうえ、周到に考え抜いた末に目標を定める。
リクルートまでの詳細な手順を設定する。

➀求められた情報の内容を確認し、特定する。
②秘密情報への接近(アクセス)可能なエージェントの候補群を
  選定する。
③候補対象者の個々に関する基礎調査を行って検討する。
④対象者を一人に絞り、更に基礎調査を深める。
⑤工作担当者を決めて、対象者へ接近作業を図る。
⑥担当者が対象者と接触し、リクルート工作に着手する。

ヒューミント工程では対象者を知るために信用調査を行うのが
不可欠である。

MICEという4つの頭文字で示される動機を持つ人はエージェント
としてリクルートの可能性がある。

M(Money)金銭へ異常な執着心を持つ、差し迫った金が必要な人。
I(Ideology)イデオロギー。つまり思想信条である。
C(Compromise)醜聞ネタによる強要。ハニートラップがいい例。
E(Ego)エゴとは自尊心や自惚れを指す。

ケース・オフィサーとは工作官であり、ヒューミント(人的情報収集)
のトップ営業マンである。その資質は相手と良好な人間関係を作る
ことができる資質である。それは誠実な人間味とそれに基づく信頼
関係の醸成である。そして説得力も必要になる。その説得力は相手
に喋らせることである。相手の話をよく聞き不満や思いを把握する。
底流にあるのは相互信頼という個人と個人でつくるものがベースに
なる。

分析という手法は、相手側もこちらの常識や発想で同じよう
に考え、同じように行動するだろうという思い込みを人は持ってしまう。
この弱点を補うために、まず先方の思考法を理解する必要があると
いったものです。 相手の目のつけ所を知るのは相手の思考法である。
分析には敵の目を通して見ることが重要である。

ヒューミントと分析は車の両輪である。
神は細部に宿る。つまり細部を積み重ねて大きな絵を描く。

分析官に必要な資質は、高度な知識と教養、磨かれた感性である。
分析官の識見として対象とする国・地域・民族・組織などの言語、
歴史、風習、思考法、情勢などを蓄えなければならない。
当然、長年の蓄積による専門家の育成が必要であり、各省庁から
の出向者で情報機関を構成することはありえない。

情報収集の保護はコインの表と裏である。
著者が外国の情報機関の人間が警察庁へ来た際にフリーパスで
入れたことで信用をなくした例を挙げている。機密情報の保護・管理
は情報収集と同じくらい重要なことである。

著者は海外において武官として情報収集にも取り組んだ経験があり
日本の情報機関設置の必要性を力説しています。特定秘密保護法案
がようやく施行され、日本版NSCも設置された。あとは情報機関の設置
が待たれる。それでも効果的に運用するには10年はかかると著者は
見ている。
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国土が日本人の謎を解く 大石久和

その国の国民性は地理や環境に大きく影響を受けるということを
丹念に検証した本です。民族の経験が民族の個性を規定する。
日本人であることへのこだわりを捨てて国際人として振る舞える
わけがないと著者は主張しています。

日本人は歴史とは流れていくものであると考えている。
大災害を経ることで、この国では過去は現在や未来につながらない。
逆にヨーロッパは歴史が積み上がって街にあふれている。
ここに流れる歴史と積み重ねる歴史の違いがある。

日本は人が何もしなくても地震によって全て崩れてしまう。
ヨーロッパでは人が何かをすることによって何かかが変わる。
ここに天為の国と人為の国の違いがある。

また日本とヨーロッパを比較するうえでの違いに死生観がある。
災害死史観と紛争死史観である。
愛する者の死が恨む相手がいないのと、いるのとでは大きく違う。
諦めて死を受容するのか、恨み抜いて復讐の誓いを立てることで
その死を受容するしかないのかという違いである。

何を経験し、何を経験しなかったのか見るとその民族の特徴が
わかる。

日本人を育んだ国土。日本は厳しい自然条件が重なり合う。

➀不便な国土 複雑で長い海岸線と細長い弓状の列島
②一体で使いにくい。四島に分かれた国土の主要部分。
③分断される。脊梁山脈の縦貫
④土砂土石流災害が襲う不安定な地質
⑤可住地が分散。狭く少ない平野
⑥近代的土地利用がしにくい。軟弱地盤上の都市。
⑦世界の大都市にない弱点。大地震の可能性。
⑧水を治めきれない。集中豪雨。
⑨建設コストが上がる。強風常襲地帯。
⑩豪雪地に大人口。広大な積雪寒冷地域。

我が国は地震、噴火、風水害によって多くの人が死んだ。
世界の人々は大量殺戮の歴史といっていい。
だから大変な費用と労力を使った都市城壁がつくられた。

都市城壁で外敵から安全に暮らすには市民としての義務
と責任を果たす。いざというとき城壁内での暮らしを守る
責任。また城壁内でトラブルなく過ごす責任。
兵士、武器職人、工夫などそれぞれが職務の責任を果
たして城壁内を守る。そして成分のルールを決め、守る
人のみ城壁内で暮らせる。つまり私に優先する公の発見
がされたということだ。

日本人は縄文時代から江戸時代まで人口400~500人
の小さな共同体で暮らす人が多かった。そして集落の中
で全戸参加の話し合いによって物事を決めていった。
何事につけても集落の単位で行動し、決定する。
何でも一緒に行うことで問題を解決してきた。
そこから我々は共を発見した。共々あることを何より尊び
喜ぶ文化、話し合いで決まったことが何より優先される
融合の文化を生んできた。

公というのは、バラバラに独立した個を、責任主体として
の個は個としたまま、集合化するための論理や知恵である。
共は一人一人が個というものを打ち消して、隠しきって、
一体となって溶け合い全体がひとつになっている。

中国は公を発見しておらず、その代わりは権力だった。
中国は民族の移動や対立が激しく、定住型の社会をつくる
ことができなかったゆえに社会の原点は国家権力である。
中国の法治主義とは、上級権力者が下級権力者に自分の
意思を忠実に実行させるための規制にすぎない。
国家権力を超越し、そこから独立し、それをも支配下に置く
ような普遍的な法体制はない。

社会体制が権力を規定するのではなく、権力が社会体制
を規定する。権力が社会体制にあるのではなく、社会体制
が権力の下にある。中国の秩序をつくっているのはむき出し
の権力である。

➀社会秩序は常に強い政治性または権力性を有している。
②社会秩序は常に強い物理性を有していて、個人の時間や
  空間を最大限にまで制約するシステムである。
③このような社会秩序はその幅・範囲が権力側の判断で
  しばしば大きくなったり、小さくなったりする。

ヨーロッパ等においては思考を形作ったのは大量虐殺である。
人は愛する者の死に直面するとき、もっともものを考えると
思われるのが、紛争で大量に殺されるときだ。
作戦がまずかったのか?相手より兵力が少なかったのか?
練度が足りなかったのか?武器が悪かったのか?など。
負けた理由から、合理的な思考によって、新たに作戦の
立案などを工夫した。紛争のたびに反省し、思考の論理性
を磨いていった。だから長期戦略や情報戦略などが発達
していった。

対して日本人は情緒と感情の民である。

最近、日本では個の強要が行われている。
それぞれ個はあるが、それを隠して職務を遂行していく
ことに日本の特徴がある。それが個を主張するように
なったら、それを磨いてきた欧米などには勝てない。

地政学にも通じる興味深い内容でした。
今後、日本と外国を比較するうえで指標になる物の見方
だと思います。
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