FC2ブログ

大国の掟 歴史×地理で解きほぐす  佐藤優

表面的な情勢がどう動いたとしても変動しない本質を把握すること。
言い換えれば、アメリカをはじめとする大国を動かす掟について理解を深める
ことである。掟を把握するにはどうしたらよいか。国際情勢の背景にある変わらない
ものに着目することである。

歴史と地理この二つの不変の要素が現下の国際情勢を規定している。
歴史はアナロジー(類比)的なものの見方を訓練することに大いに役立ちます。
この考え方を身につければ未知の出来事に遭遇したときでも、過去の出来事と
類比を考えて、冷静に分析できる。先行きの見通しにくい時代であればあるほど
アナロジー的思考は大きな力を発揮する。

地理を学ぶ意義はまさに長い時間が経っても変化しないということに尽きる。
海がない国は海がないという地理的条件、半島国家は半島という地理的条件
に規定される。国際情勢のような複雑な問題を解くためには動かない要員を
知ることが何より近道となる。

このような地理的思考を国家戦略に活用したものが地政学と呼ばれるものである。

1.英米を動かす掟

アメリカとイギリスは孤立主義という一致した動向を見せている。
これは海洋国家という地理的な特徴が浮き彫りになっている。
トランプ現象は孤立主義の現れである。その孤立主義はモンロー宣言に象徴される。
モンロー宣言とはアメリカの裏庭である中南米への影響力を拡大し、同時にヨーロッパ
の影響力を排除することを目的としたものである。

アメリカの帝国主義化は孤立主義と矛盾するものではない。
帝国主義を拡大させながら、アメリカは国際的な揉め事には極力首をつっこまないように
している。

思想面から見た場合、アメリカの孤立主義は啓蒙主義の影響を強く受けていることがわかる。
啓蒙思想とは暗闇の中でロウソクを一本ずつ灯していくと、明るさが増し、周囲の様子がよく
見えるようになるというモデルである。知識が増えれば、社会は豊かになり、人間は幸福に
なるという物の見方、考え方である。

啓蒙主義は物体であれ、人間社会であれ、個が集まって全体が成立すると捉える原子論的な
考え方をモデルとしている。

トランプの主張の核にあるのは、アメリカを真珠湾奇襲以前の姿に戻すことである。

新自由主義は、ソ連崩壊によって東西冷戦が終結した1991年以降、さらに加速していく。
社会主義革命の恐れがなくなれば、資本主義は遠慮する必要もないため、いくらでも暴走
できる。同時に、この時期から、ヒト・モノ・カネが国境を越えて自由に移動するグローバル化
が急速に進行していきました。

新自由主義は個人をアトム(原子)化してバラバラにする。新自由主義には、経済主体が
行動するにあたって、障害になる規制を全て除去するという排除の思想が組み込まれている。
新自由主義のゲームのルールでは、市場で勝利したものが成果を総取りできる。
その結果、グローバル資本主義のもと、資本主義は巨大な格差を生み出し続けることになった。

アメリカ的な民主主義とは、白人の民主主義ということである。

イギリスはEU離脱を選択した。イギリスはかつての栄光ある孤立を選んだということ。
92年EU領域を決めるマーストリヒト条約が調印されユーロの使用が決まった。
イギリスは単一通貨を使用せず、独自通貨のポンド使用を継続した。
EU加盟国といってもヨーロッパ大陸の加盟国とは異なる道を歩んできた。
これも栄光ある孤立が底流にある。

イギリスはEU離脱を選択することで国内政治にこれまでにない大きな分断を
もたらした。これはトランプ現象と共通するものである。

両国が孤立主義を選択することができるのか地政学的な補助線を入れる。
それはどちらも海洋国家であるからだ。海洋国家は海を通じてどこへでも
行ける。この地理的条件は決定的に重要である。
いくことができるのなら、いかない選択肢もあるということである。

シーパワーとランドパワーを比べたとき、シーパワーの優位性は海から陸を
囲むことができる点にある。点と線を押さえればよい。
シーパワーを制するということは、世界的なネットワークを維持できるという
ことに他ならない。だからこそ、イギリスもアメリカも覇権国になることができる。
自由主義の背後にはシーパワーを持った覇権国の存在がある。

国内の憂いが拡大すれば、点と線の支配に頼るシーパワーも弱体化して
しまいます。人的にも経済的にも、国内に力を注がなければならなくなる。

2.ドイツを動かす掟

第一次世界大戦も第二次世界大戦も膨張するドイツとそれを封じ込めようとする
英仏を中心とするヨーロッパ諸国との対立として捉えることができる。
現在のEUも、その根本では独仏が同盟を組むことで、ドイツを全ヨーロッパに取り込む
ことが大きな課題となった。

1888年を境として、ビスマルク外交からウェルヘルム二世の世界政策へ転換したことが
20世紀のドイツの運命を大きく変えた。ビスマルク外交のポイントはフランスの孤立化にある。
ビスマルクは外交によってヨーロッパの安定を図ろうとした。それがウェルヘルム二世によって
海軍の大増強をはかり、イギリスと建艦競争を展開した。

帝国主義下のドイツ、ナチス・ドイツ、そしてEUには明らかな共通点がある。
いずれも東方拡大をベクトルとして持っている。3B政策である。
それとあわせてドイツ人の民族結集をはかり、ドイツ帝国の世界覇権をめざす
イデオロギーであるパンゲルマン主義という思想が浸透していった。

マッキンダー理論は国家や民族を有機体的な生命と捉え、強い国家や民族が生き残って
生存圏を拡大していくのは自然の摂理だと考える。

シーパワーはユーラシア大陸を海から取り囲むことができる。
その結果、ヨーロッパとアジアの立場は逆転し、ヨーロッパはアジアのランドパワーを
政治的、軍事的に包囲できる立場となった。マッキンダーはヨーロッパ諸国が海上勢力
を拡大していた時代は、同時に、ロシアがシベリアを支配し、ロシア農民が南部に移住する
時代になった。ユーラシア大陸が鉄道網で覆われれば、ロシアのランドパワーは更に拡大
すると予想した。ユーラシア内陸部には鉱物資源が眠っており、海上貿易ではなかなか
アクセスできない。そこをロシアが制したならばかつてのモンゴル帝国のような存在になる
とした。

マッキンダーはユーラシア大陸の広大な部分は、まさに国際政治の回転軸に相当する地域だとした。

東欧を制する者はハートランドを制し、ハートランドを支配するものは世界島を制し、世界島を制する
ものは世界を制する。

東ドイツでは旧ナチスというだけで戦犯にすると国家の運営ができない状態だった。
そこでソビエト軍事政府はナチ党に所属していただ戦争犯罪にてを染めなかった党員に
社会復帰の道を開き、市民権や政治的権利を回復し。1948年非ナチ化終了宣言を行った。

EUができてもドイツの包摂は成功していない。
ドイツを野放しにしないために創設されたEUも、その経済面を見る限り、結局ユーロという
名の拡大マルクが席巻している。ドイツだけの一人勝ちで東方へEUは拡大している。

ギリシャは欧米が勢力圏としたが、支援の仕方に問題があった。
産業化の支援をしなかった。産業化すると工業が発展し、工場労働者が生まれる。
そうなると共産党の組織化がなされるからである。だから農業と観光だけの国にした。

ギリシャ債務危機はEUの南北問題を象徴的に示している。
この違いは南部はローマカトリックの国、北部はプロテスタントの国が多い。
プロテスタントは生まれる前から神に選ばれているという選民思想がある。
自分たちのこの世での成功は保証されている。一見失敗だったとしてもそれは神の
試練であると。世のため、人のために努力すれば神は喜ぶ。そこに生じる禁欲的
職業倫理が経済に結びつく。

カトリシズムは天国における来世を重視する。
人生たかだか80年。あの世は永遠である。だから人々は自分がこの世に貢献するよりも
天国に行けるよう教会に全て寄付しようという考えである。
教会にお金がたまり、豪華な建物を建て、教会インフラという形で富が蓄積する。

EUという帝国内での覇権を握っているドイツにとってもEU内の自由貿易体制を維持する
ことが富を蓄積する最善の手段である。

EUが財政破綻に陥った場合ギリシャを切り捨てたとして考えられるシナリオの一つが
ロシアの影響下に入るというもの。ロシア海軍がエーゲ海へ出口を持つことになる。
もうひとつのシナリオはISがエーゲ海の島々に入ってくるというもの。

EU最大の目的はナショナリズムの抑制である。
EUとは二度と戦争はしたくないという独仏同盟を中心とする西ヨーロッパの帝国と
考えなければならない。この帝国にはナショナリズムや民族を超えた、コルプス
クリスティアヌムという概念である。コルプスクリスティアヌムとはユダヤ・キリスト教
一神教の伝統であるヘブライズム、ギリシャ古典哲学であるヘレニズム、ローマ帝国
ラテン法の伝統であるラティニズムの三つの要素から構成された総合体。

ドイツは東方進出を終えた段階に入っており、逆にEU統合を維持するためのコストを
支払わなければならなくなっている。だからこそドイツ国内でも反EU勢力の発言力が
強まっている。

3.ロシアを動かす掟

国家の振る舞いは地理的諸条件に制約される。それゆえ地理的諸条件はイデオロギー
に先行する。プーチンの言う地政学には、国家は、地理的諸条件にもとづいて、最も
利益にかなう行為を選ばなければならない。

ユーラシア主義と緩衝地帯という二つの概念。
もともとロシア人という概念自体がユーラシア主義と深く結びついている。
ロシア語でロシア人はルスキーとロシヤーニンという二つの概念がある。
ルスキーは血筋の意味でのロシア人である。ロシヤーニンはスラブ系ロシア正教を
信じる白人だけの国家とは考えない。トルコ系、イラン系でイスラム教を信じる人々
モンゴル系のチベット仏教を信じる人々、精霊や呪術師を信じるシベリヤや北極圏の
少数民族などのロシヤーニンからなる帝国と捉える。ロシアは必然的に帝国となる
運命にあり、ロシアは欧州やアメリカ、アジアとは異なった論理と発展の法則もっている
というのがユーラシア主義者の主張である。

プーチンはユーラシア同盟が域外との障壁をつくる関税同盟であることを明確にしている。
リーマンショックに端を発する世界経済の危機を帝国主義的な経済ブロックを創設する
ことで乗り切ろうとしている。

狭義のユーラシア主義とは、第一次世界大戦後の1920年~1930年代にかけてソ連から
西欧に亡命した知識人が掲げた思想である。ヨーロッパとアジアにまたがるロシアは、ユーラシア
空間によって規定された独自の法則を持つ小宇宙である。

スターリン下のソ連外交の実態は、自国の安全保障を確保するために勢力圏を極力拡大する
という考え方で、帝国主義と親和的です。なおかつ、実際のソ連は国民生活のあらゆる部分に
国家が介入する極端な国家主義である。ユーラシア主義者はソ連のこのような帝国主義的体質
も肯定的に評価する。ユーラシア主義者は反共産主義者だが、親ソ連である。

ソ連崩壊後、中央アジアの諸国では部族を中心とするエリート集団が権力を握り、他方で経済的
困窮からイスラム主義が拡大している。

ロシアという国家を理解するうえで緩衝地帯という地政学的概念は決定的に重要である。
ロシアは国境を線ではなく面で捉える。ロシア人が線で国境を考えるのは、隣国が友好国の場合
に限られる。少しでも隣国が侵入してくる危険性がある場合には、線で国境を引いたとしても
国境の外側の一定の幅のところに緩衝地帯を持つことを重視する。
ロシアは平原であるゆえに、いつでも攻め込まれる不安がある。
だから緩衝地帯を持っていないと安心できない。

東ドイツ、ポーランド、ハンガリー、チェコスロバキアを併合しなかったのは、併合すると
西側諸国と直接国境を接することになり、衝突のリスクが高まるからである。
こうした緩衝地帯には、ソ連体制と同じではなく西側の要素を入れている。
これらの国では教会活動が比較的自由だった。

緩衝地帯は中央アジアでも重要な意味をもっている。
ロシアにとって中央アジアやモンゴルは中国との衝突を回避する緩衝地帯として作用している。
グルジア、クリミア、ウクライナに対するプーチンの強硬姿勢は緩衝地帯を失った危機感に
起因している。

4.中東を動かす掟

現在の中東情勢の真の原因は中東の地理的実態と合致しない欧米の政策である。
その出発点がフランス、イギリス、ロシアの間で結ばれたサイクス・ピコ協定である。

外来のものである固定という要素を無理やり押し込んでできているのが現在の中東
諸国である。この固定は非常に脆弱である。実際、アラブ諸国のほとんどが、国民国家
の形成に失敗している。民族を形成するうえで決定的に重要である民族教育がアラブ
諸国では不徹底だった。

人権の思想は、近代ヨーロッパの勢力拡大とともに、世界中に拡散していった。
近代化プロセスの中では、濃淡の差こそあれ、どの国にも人権思想が浸透していく。
その結果、人民の代表を選挙によって選出する代議制民主主義も定着していくわけ
です。人権の思想は、地域によってはイスラム世界にも入っていきます。
トルコ、イラン、インドネシア、パキスタンでも、民主主義という形式は取り入れられている。

アラブ世界だけは、人権から神権の転換が起こらなかった。だから現在でも神権です。
神権では、神が決めたことが全てであり、人間が自己統治する余地はありません。
そうなると急に民主化をすると多くの有権者はムスリム同胞団へ投票する。

シーアとは分派、党派という意味である。
もともとはアリーのシーアと呼ばれていた。
スンナ派は代々のカリフを正統と認めるイスラムの多数派です。
スンナ派はムハンマドの伝えた慣行(スンナ)に従うものを意味する。
イスラム法の解釈によって、ハナフィー派(イラク西部、トルコ、シリア、中央アジア、
エジプト西部、南アジアなど)マーリキー派(アラビア半島東部、北アフリカ)
シャーフィイー派(イエメン、イラク中部、エジプト東部、東アフリカ、東南アジアなど)
ハンバリー派(カタール、UAEなど)ワッハーブ派(サウジアラビア、アルカイダ)

ワッハーブ派はコーランとハディース(ムハンマド伝承集)しか認めていない。
成人崇拝も墓参りもしない。ムハンマド時代の原始イスラム教へ回帰を伝え
極端な禁欲主義を掲げている。

グローバルジハード論は、分散的なネットワーク型の組織原理に基づいている。

ISはほかのアルカイダ関連組織と比べてシーア派の殲滅を重視する。

今後中東が抱える脅威は核の拡散である。その震源地と考えられるのが
サウジアラビアである。

イランはかつてのペルシャ帝国へ。トルコはオスマン帝国へ回帰しようとしている。

5.中国を動かす掟

一帯一路とは、中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる
シルクロード経済ベルトと、中国沿岸部から東南アジア、インド、アラビア半島の沿岸部
アフリカ東海岸を結ぶ21世紀海上シルクロードである。陸と海の両方からユーラシア大陸
の東西を結び巨大なフロンティアを生み出そうとしている。地政学的に見ればランドパワーと
シーパワーを同時に展開してユーラシア大陸を囲い込むことになる。

中国は海洋戦略をとるようになった。
海洋国家のアドバンテージは、港を点でつなぎ、世界をネットワーク化できることにある。
海洋国家は覇権国になりやすい。ただし、海洋国家同士は折り合いが悪い。

人工島問題を理解するためには国連海洋法の基本的な知識が必要。
中国は1996年に国連海洋法条約を批准しているにもかかわらず、そのルールに背いて
人工島を作っている。

中国の海洋進出が進まない3つの理由
➀中国海軍の実力不足
➁海洋戦略の基本に反している。人工島など大人気ないことをせずに、各国の領海は
  狭めて航行の自由を広く認めていく方向を模索するべき。その方が中長期的に海軍力
  が強い国なら有利になる。

③新疆ウイグル自治区の問題である。近くのフェルガナ盆地で第二イスラム国ができる可能性。

ウイグル人はウイグル民族に属するという自己意識とムスリムであるという複合アイデンティティ
をもっている。民族独立運動には敏感だったが、イスラム主義について注意が甘い。

中国は内陸アジアとの攻防を経ることで形成されてきた国家である。

海の地政学は多く見積もって地政学の半分しかない。そして現代的意義を考えるならば
4分の1程度の重要性しかもたない。地政学の核心は制約条件を考えることである。

中国の一帯一路政策は海と陸それぞれに困難を抱えている。

地政学的に考えれば、日本は大陸の影響を強く受ける位置にある。
鎖国システムをを築くことで冊封体制脱することができた。





スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

FC2USER934313IYM

Author:FC2USER934313IYM
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR